決算分析

大阪瓦斯株式会社
2026-03期 有報5年推移分析

公開日: 2026/09/04

売上は減り、稼ぎは5期で最高 | 有価証券報告書 2026年3月期

参考株価と時価総額

項目
前提2026-09-04 09:05時点の参考株価。当期末(自己株式控除前)の発行済株式総数で算出
株価5,822円
発行済株式総数397,881,800株
時価総額23,164.7億円

売上は減ったのに、稼ぎは5期で最高 ―― 大阪ガス2026年3月期を読む

提出日:2026-06-22 / 会計期:2026年3月期

項目前期当期前期比
売上高20,690.19億円20,303.02億円△1.9%
営業利益1,607.31億円1,748.09億円+8.8%
現金及び預金828.10億円589.81億円△28.8%

ようか | キョトン

やよい姉、これ表の見方まちがえてない?

売上は減ってるのに、利益は増えてるよ?


やよい | あきれ顔

まちがえておらぬ。

そう書いてあるとおりじゃ。


ようか | 驚き

えっ、じゃあ良い決算ってこと!?


やよい | 説明

そこがまだ言い切れぬ。

いちばん下の行も見るのじゃ。


ようか | 泣きつく

現金が3割近く減ってる!

稼いだのに減ってるって、どういうこと!?


やよい | 自信あり

そこがこの期のいちばん面白いところじゃ。

順番に見ていくぞ。


目次

  • 会社概要: 社名はガスでも、中身は3つの事業
  • 収益構造: 国内で守り、海外へ出す
  • 前期からの変化: 売上が減って、利益が増えた
  • 当期の注目ポイント: 数字の焦点
  • 5年推移の財務諸表まとめ: 資源価格に振り回された5期
  • 指標まとめ: 来期に答えが出る問い
  • 補足: データの読み方と注意点

1. 会社概要: 社名はガスでも、中身は3つの事業

ようか | 笑顔

大阪瓦斯かぁ、ガスを売っている会社だっけー?

やよい姉!解説よろしく!!


やよい | 自信あり

うむ!わらわが解説してやるぞ。

ガスの製造・供給・販売はたしかに中心じゃ。

じゃがそれだけではないぞ。


ようか | キョトン

え、他になにやってるの?


やよい | 説明

海外でのLNG開発投資に、不動産開発、化学品、ITサービスまで手を広げておる。

当社と子会社154社、関連会社114社からなる大所帯じゃ。

事業は3つの区分に分かれておってな。


ゆり | 無表情

まとめたのです。

区分内容
主力商品・サービス都市ガスの製造・供給・販売、一般ガス導管事業(大阪ガスネットワーク株式会社)、発電・電力供給。国内エネルギーが収益の中心
その他商品米国・豪州・シンガポール・インド・欧州等での天然ガス開発・LNG関連投資(海外エネルギー)、不動産開発・賃貸、ソフトウエア開発、ファインケミカル・活性炭製造(ライフ&ビジネス ソリューション)
収益形態国内エネルギーは継続供給契約が中心のストック型寄り。海外エネルギーは長期契約が多いが市況で変動しやすい。ライフ&ビジネス ソリューションはストック型とフロー型が混在
開示区分日本基準の連結。報告セグメントは国内エネルギー・海外エネルギー・ライフ&ビジネス ソリューション(LBS)の3区分

ようか | 驚き

3つも事業があるのに、名前は「瓦斯」のまんまなんだ!


やよい | あきれ顔

社名は昔のままでも、中身は広がっておる。

従業員数で見ても、国内エネルギーとライフ&ビジネス ソリューションはほぼ同じ規模じゃ。

それぞれ1万人を少し超えるくらいでな。


ようか | キョトン

じゃあ海外のほうは?


やよい | 説明

わずか333人しかおらぬ。

じゃが、そこが投資規模のいちばん大きい事業でもあるのじゃ。


ゆり | 無表情

株主の顔ぶれも押さえておきたいのです。

最大株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、自己株式を除いた発行済株式総数の 14.79% を持っているのです。

大株主上位10社の合計は 35.77% なのです。


やよい | 説明

特定の大株主に偏りすぎていない、という見方もできるがのぅ。

まずは事業の稼ぎ方を見ていくとしよう。

2. 収益構造: 国内で守り、海外へ出す

ゆり | 無表情

収益に対する企業姿勢はどうなのでしょう?


やよい | 自信あり

うむ。よい指摘じゃ。

国内エネルギーは「安定供給と保安の確保」を掲げつつ、ガス導管網の更新や発電設備に投資を続けておる。

当期末で導管の総延長は52,013kmまで伸びておるぞ。


ようか | キョトン

それって、伸ばす投資なの? 現状維持の投資なの?


やよい | 説明

半分ずつじゃな。

いまのお客さまとの契約を保つための投資と、新しく伸ばすための投資が混ざっておる。

海外エネルギーのほうは、もっとはっきりしておってな。

出した金額の分だけ収益が伸びやすい形じゃ。


ゆり | 無表情

設備投資の金額を見てみるのです。

セグメント当期の設備投資
国内エネルギー1,245.53億円
海外エネルギー907.31億円
ライフ&ビジネス ソリューション416.73億円

ようか | 驚き

海外、あんなに人が少ないのに投資額はすごい!


やよい | 説明

そこが海外エネルギーの性格じゃ。

人手をかける商売ではなく、LNG開発案件への出資でお金を動かす事業ということじゃな。


ようか | キョトン

じゃあ、3つ目のライフなんとかは?


やよい | 説明

不動産とITは比較的軽い投資で伸ばせる。

ただ、化学品のほうは生産設備にお金が要る。

同じ区分の中でも性格が混ざっておるのじゃ。


ゆり | 微笑み

3つの事業を組み合わせて、経営環境の変化に対応しているということですか?


やよい | 自信あり

うむ。そういう構えじゃな。

あとは、海外へ振り向けた投資がきちんと利益として戻ってきておるか。

そこを見ていく必要があるな。

3. 前期からの変化: 売上が減って、利益が増えた

売上と利益:減った売上、増えた粗利

ようか | 笑顔

やよい姉、さっきの表のねじれ、そろそろ教えて!


やよい | 説明

うむ。あらためて並べるぞ。

項目前期比較前期当期
売上高20,690.19億円20,303.02億円
営業利益1,607.31億円1,748.09億円
営業利益率7.77%8.61%
親会社株主帰属純利益1,344.14億円1,527.51億円

ようか | キョトン

やっぱり売上は減ってるのに、利益は全部増えてる!

なんで逆になるの!?


ゆり | 無表情

売上原価の動きを見てみるのです。

項目前期当期前年差
売上高20,690.19億円20,303.02億円△387.17億円
売上原価16,634.41億円15,927.85億円△706.56億円
売上総利益4,055.77億円4,375.16億円+319.39億円

やよい | 説明

売上より原価のほうが大きく減っておるじゃろう。

LNGなど原燃料の仕入コストが下がった分を、料金にすぐ反映せずに済んだためと見ておる。

ガス料金には原料費調整という仕組みがあってな。

コストが下がった局面では、その差が粗利側に残りやすいのじゃ。


ようか | 泣きつく

原料費調整って何? むずかしい!


ゆり | 無表情

原油やLNGの価格変動を、時間差をつけて料金へ反映する制度なのです。

コストが上がったときは会社の負担が先に増え、下がったときは逆に利益が先に残りやすいのです。


ようか | キョトン

じゃあ、値上げも値下げもワンテンポ遅れるってことか。


やよい | 説明

そういうことじゃ。

販管費のほうは2,448.46億円から2,627.06億円へ増えておるが、粗利の伸びがそれを上回った形じゃな。


ようか | キョトン

純利益のほうが営業利益より伸び率が高いのは?


ゆり | 無表情

税金の負担が軽くなったのです。

項目前期当期前年差
経常利益1,896.47億円2,045.22億円+148.75億円
法人税等541.96億円501.62億円△40.34億円
親会社株主帰属純利益1,344.14億円1,527.51億円+183.37億円

やよい | 説明

法人税等調整額が277.37億円から74.57億円へ縮んだことが主因じゃ。

経常利益の伸び以上に、純利益がしっかり伸びておる。

現金とネットキャッシュ:減ったのに差は縮んだ

ようか | 泣きつく

利益は増えてるのに、冒頭で現金が減ってたよね?

あれはどうなったの?


やよい | あきれ顔

思い出してくれたか。

そこは別々に動いておる。表を見るのじゃ。

項目前期比較前期当期
現金及び預金828.10億円589.81億円
現金及び預金の対資産率2.59%1.78%
有利子負債8,649.38億円7,942.19億円
ネットキャッシュ△7,821.28億円△7,352.38億円
ネットキャッシュ比率△33.24%△31.74%

ようか | 驚き

現金は減ってるのに、下2行はマイナスが小さくなってる!


やよい | 説明

そこがこの会社らしいところじゃ。

現金そのものは減ったが、借金のほうがそれ以上に減っておる。

差し引きで見れば、わずかに近づいたのじゃ。


ゆり | 無表情

とはいえネットキャッシュは5期ともマイナスなのです。

借入や社債で設備投資と海外投資をまかなう形が続いている、ということですか?


やよい | 説明

そう見てよい。

ただしガス導管や発電設備という重い資産を持つ商売ゆえ、借入をゼロにするのが目標ではない。

自己資本比率は52.8%から54.4%へ上がっておって、土台自体は固くなっておる。

フリーCF:3倍以上になった理由

ようか | キョトン

フリーCFって、たしか自由に使えるお金の話だっけ?


やよい | 説明

そうじゃ。

本業で稼いだ現金から、投資で出ていった現金を引いた残りじゃ。

まずは表を見るのじゃ。

項目前期比較前期当期
営業CF2,836.81億円3,407.40億円
投資CF△2,556.26億円△2,418.52億円
フリーCF280.55億円988.88億円

ようか | 驚き

フリーCF、3倍以上に増えてる!!


ゆり | 無表情

営業CFが増えた中身を並べてみたのです。

向き項目前期当期
押し上げ税引前当期純利益1,892.50億円2,028.92億円
押し上げ売上債権の増減△427.41億円+210.69億円
押し下げ法人税等の支払額230.27億円356.43億円

やよい | 説明

利益が増えたことに加えて、売上債権の回収が進んだのが効いておる。

売った代金が手元に入るのが早まった、ということじゃな。


ようか | キョトン

投資のほうは? 減ってるよね。


やよい | 説明

関係会社株式の取得による支出が688.24億円から145.69億円へ縮んだ分が大きい。


ようか | 自信あり

なるほど、投資を控えたんだな!


やよい | あきれ顔

そこは早とちりじゃ。

有形固定資産の取得による支出は、むしろ2,108.50億円から2,385.40億円へ増えておる。

前期にあった大きな出資が一巡した分、全体としては軽くなっただけじゃ。


ようか | キョトン

じゃあ設備にはちゃんとお金を使ってるのか。


ゆり | 真剣

財務CFのほうも見ておきたいのです。

項目前期当期前年差
自己株式の取得による支出△400.60億円△635.31億円△234.71億円
長期借入金の返済による支出△519.10億円△720.03億円△200.93億円
財務CF△340.85億円△1,291.77億円△950.92億円

ようか | 驚き

出ていくほうが、ぐっと増えてる!


やよい | 説明

これが冒頭の答えじゃ。

自社株買いを積み増し、借入の返済も進めた。

そのぶん、稼いだ以上に外へ出て行ったのじゃ。


ようか | キョトン

つまり、お金が足りなくて減ったんじゃなくて……


やよい | 自信あり

うむ。株主への還元と借金の圧縮を先にやった結果じゃ。

同じ「現金が減った」でも、中身はまるで違うのう。

4. 当期の注目ポイント: 数字の焦点

ようか | 泣きつく

ゆり姉ぇ~わたしにも分かるようにポイントまとめて~😢


ゆり | 微笑み

まとめてみました


▶ 売上高は前期比 △1.9%(20,690.19 → 20,303.02億円)だが、営業利益は +8.8%(1,607.31 → 1,748.09億円)で5期で最高なのです。原料費調整の効果で、原価の下がり方が売上の下がり方を上回ったことが主因なのです。

▶ 現金及び預金は前期比 △28.8%(828.10 → 589.81億円)なのです。自己株式取得が △635.31億円 に増えたことと、長期借入金の返済が △720.03億円 に増えたことが主因なのです。

▶ フリーCFは前期比 +252.5%(280.55 → 988.88億円)なのです。営業CFの最高水準更新(3,407.40億円)と、投資CFの流出縮小が重なったのです。

▶ ネットキャッシュ比率は △31.74% で、5期を通じて一度もプラスになっていないのです。ガス導管や発電設備という重い資産を持つ事業ゆえ、借入を使う資本構成が続いているのです。

▶ 国内エネルギーの継続供給契約というストック型中心の収益基盤が、営業CFの回復(2023/3期335.72億円 → 当期3,407.40億円)を下支えしていると考えられるのです。


5. 5年推移の財務諸表まとめ: 資源価格に振り回された5期

ようか | 笑顔

前期との違いは分かったけど、ちょっと長いスパンで見るとどうなんだ!?


やよい | 自信あり

うむ、まずは稼ぐ力を見て行こう。


項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
売上高15,91122,75120,83120,69020,303
当期純利益1,3045711,3271,3441,528
営業利益9496001,7261,6071,748
営業利益率5.96%2.64%8.28%7.77%8.61%

やよい | 説明

ようか、ここから何を見る?


ようか | 驚き

真ん中で売上がドンッて跳ね上がって、そのあとちょっとずつ減ってる!

利益のほうは、売上が跳ねた年だけガクッと下がってる!


やよい | 説明

よく見ておるな。

2023/3期は資源価格の高騰で、LNGなどの仕入コストが急に上がった年じゃ。

売上高は前期比+43.0%まで伸びておる。


ようか | キョトン

売れたのに、なんで利益が減るの!?


やよい | 説明

原価がそれ以上に増えたからじゃ。

営業利益率は5.96%から2.64%まで落ちておる。


ゆり | 無表情

料金への転嫁にはタイムラグがあるのです。

原料費調整制度の仕組み上、仕入コストの上昇を販売価格へ反映しきれなかった年ということですか?


やよい | 説明

うむ、そういうことじゃ。

2024/3期には転嫁が進んで利益率が8.28%まで戻り、以降は8%前後で落ち着いておる。

売上高のほうは資源価格が正常化して縮んだが、これは「量」ではなく「価格」が下がった影響じゃ。


ようか | キョトン

じゃあ、稼ぐ力自体は落ちてないってこと?


やよい | 自信あり

そのとおりじゃ。

営業利益は当期の1,748億円が5期で最も高い。

次はお金の流れを追っていくぞ。


項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
現金及び預金1,311851777828590
現金及び預金の対資産率5.10%3.02%2.61%2.59%1.78%
ネットキャッシュ△5,844△7,264△7,369△7,821△7,352
ネットキャッシュ比率△54.70%△77.74%△51.47%△53.06%△35.20%
フリーCF△68△1,704967281989

ようか | 驚き

フリーCFの棒、真ん中でガクッと下に突き抜けてる!

ネットキャッシュもずっとマイナスの棒だ!


やよい | 説明

2023/3期のフリーCFが大きく沈んだのは、営業CFが1,453.50億円から335.72億円へ急に減ったためじゃ。

そこへ、資源価格の高騰で在庫と売掛金がふくらんだ分が重なった。


ようか | キョトン

仕入が高いと、在庫の値段も上がっちゃうのか。


やよい | 説明

そういうことじゃ。

2024/3期からは営業CFが3,000億円台に戻り、フリーCFも黒字を取り戻して広がっておる。


ゆり | 無表情

ネットキャッシュ比率のほうは、各期の有価証券報告書提出日の株価と、当時の発行済株式総数から計算した参考値なのです。

2023/3期に△77.74%まで悪化したあと、当期は△35.20%まで戻っているということですか?


やよい | 説明

そういう見方もできるが、本質は別物じゃ。

比率が戻ったのは、株価が上がって分母がふくらんだ影響が大きい。

金額のほうは△5,844億円から△7,352億円へ、5期を通じてむしろ広がっておる。


ようか | キョトン

じゃあ、まだまだ借金頼みってこと?


やよい | 説明

その構図は5期を通じて変わっておらぬ。

ただ、EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)に対する支払利息の倍率は13.66倍から22.49倍へ改善しておる。

利息を払う力そのものは、むしろ強くなっておるのじゃ。


ゆり | 微笑み

さらに詳細に知りたい人向けに、財務諸表をまとめたので、必要な方は以下を見るといいのです。

▼ 財務諸表を見る

ゆり

詳細に知りたい人向けに、財務諸表まとめたのです。

▼ BS(貸借対照表)

項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
現金及び預金1,311851777828590
流動資産7,0777,8097,6258,1288,289
有形固定資産11,56312,43813,04914,27714,948
総資産25,88128,19629,80132,00533,214
流動負債4,0024,5983,9394,0984,502
固定負債8,9189,4269,81210,51410,172
純資産12,96114,17216,05017,39318,540
自己資本比率49.1%49.3%52.9%52.8%54.4%

▼ PL(損益計算書)

項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
売上高15,91122,75120,83120,69020,303
売上原価12,76419,92916,72716,63415,928
売上総利益3,1482,8224,1044,0564,375
営業利益9496001,7261,6071,748
親会社帰属純利益1,3045711,3271,3441,528

▼ CF(キャッシュ・フロー計算書)

項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
営業CF1,4543363,1262,8373,407
投資CF△1,522△2,039△2,159△2,556△2,419
財務CF△3051,196△1,101△341△1,292
フリーCF△68△1,704967281989
現金増減△360△460△7651△238

(連結・日本基準、単位は億円。金額は億円に丸めているため、合計欄と内訳の単純合算に丸め差が生じる場合があります。2022/3期のBSは、翌年度の有価証券報告書に記載された比較年度の値を採用しています。詳しくは補足を参照してください)

6. 指標まとめ: 来期に答えが出る問い

ようか | 笑顔

売上が減っても稼ぎは最高、でも現金は減った。

なんか、まとめにくい決算だな!


やよい | 自信あり

まとめにくいときは、無理にまとめぬのがよい。

かわりに、来期に答えが出る問いを置いておくとしよう。


  • 原料費調整の追い風が消えても、営業利益率8%台を保てるか? → 当期の粗利拡大は、仕入コストが下がった局面の恩恵という面が大きい。資源価格が上を向いたとき、同じ形では残らない。

  • 海外エネルギーへ投じた907.31億円は、いつ利益として戻ってくるか? → 従業員333人の事業に、国内エネルギーの7割を超える投資を振り向けている。回収の姿はまだ数字として見えていない。

  • 自己株式の取得は、この水準で続くのか? → 当期は635.31億円まで積み増し、それが現金の減少につながった。累進配当とDOE3.5%目標をどう並び立たせるかが次の焦点になる。

  • ネットキャッシュのマイナスは、縮むのか広がるのか? → 5期で△5,844億円から△7,352億円へ広がった。設備更新と株主還元を同時に続けるかぎり、借入への依存は続く。


ゆり | 微笑み

さらなる分析用は下を開いて見るのです。

分析用データを見る

指標まとめ(2026年3月期)

やよい: 単純な数値では測れぬが、バリュエーション指標としてはPEREBITDAROICあたりを、財務健全性は流動比率EBITDA/利息あたりを、株主還元余地は現金比率ネットキャッシュ比率を指標として見るとよいぞ。

指標算出値見方
PER15.16倍参考株価5,822円÷1株当たり当期純利益。自己株式を控除した株式数ベースでは14.63倍
現金比率1.78%現金及び預金589.81億円 ÷ 総資産33,214.05億円。5期で5.10%から低下し続けている
流動比率184.11%流動資産8,288.82億円 ÷ 流動負債4,502.12億円。5期で最も低かった2022/3期(172.97%)より改善
ネットキャッシュ△7,352.38億円現金及び預金589.81億円 − 有利子負債7,942.19億円。有価証券は抽出した財務データに該当科目の行が5期とも無いため0円として計算
ネットキャッシュ比率△31.74%ネットキャッシュ ÷ 時価総額23,164.68億円(記事作成時点の参考株価ベース)。投資有価証券548.43億円の0.7掛けまで含めた参考値では△18.79%
EBITDA3,099.47億円営業利益1,748.09億円 + 減価償却費相当額。5期で最高水準
EBITDA/自己資本17.16%EBITDA ÷ 自己資本18,060.43億円相当(純資産から非支配株主持分を除いた額)
EBITDA/利息22.49倍EBITDA ÷ 支払利息。5期で最も高い水準で、利払いへの耐性は改善傾向
ROIC5.80%営業利益×0.7 ÷(自己資本+短期・長期借入金)。中期経営計画の目標水準(5%程度)を上回る

リスク

ようか: 有報からの抜粋だぜ!

  • 経済金融社会情勢、景気等の変動、市場の縮小: 国内外の経済・金融・社会情勢の悪化や地政学的な緊張の高まりが、売上減少や資金調達の不調につながるリスク。2026/3期には「2026年2月以降の中東情勢の変化」という具体的な地域名を挙げた記述が新たに加わった。
  • 気温・水温の変動によるエネルギー需要への影響: ガス販売量・電力販売量が気候要因で変動するリスク。
  • 為替、調達金利の価格変動/原燃料費の変動/電力調達価格の変動: 為替・調達金利・原油価格・LNG価格の変動が経営成績に影響するリスク。原料費調整制度やヘッジで抑制に努めているが、価格転嫁が追いつかない場合に影響が出るとしている。
  • 原料等の調達に関するリスク: LNG等の大半を海外輸入に頼っており、調達先のトラブルや自然災害、カントリーリスクにより想定通り調達できない場合のリスク。
  • 気候変動対応等の環境リスク: カーボンニュートラル対応の遅れや規制変更、需要家・投資家の選好変化により対応コスト増や販売量減少につながるリスク。
  • 情報・制御システムにおけるセキュリティリスク: サイバー攻撃等によりガスの製造・供給や料金システムが停止した場合のリスク。
  • 経理財務に関するリスク: 成長投資が適切に回収できない場合のリスク。
  • 海外投資に関するリスク: 海外事業拡大に伴う政策・規制変更、市況変動、プロジェクト遅延・採算悪化のリスク。当期の海外エネルギー設備投資は907.31億円。
  • 大規模な災害、事故、感染症等に関するリスク/ガス製造・発電・供給・消費機器等に関するリスク: 自然災害や設備トラブルによる供給支障のリスク。
  • コンプライアンスリスク/人的資本に関するリスク/人権リスク: 法令違反、人材確保の困難化、人権尊重への対応不備によるリスク。人権リスクとサイバーセキュリティは、以前は独立した項目ではなかったが近年新設・拡充された。

株主還元

ゆり: 株主還元だけを見ての投資はダメですが、長期で買う前提の場合は現在値を知っておきましょう。

項目数値補足
発行済株式総数397,881,800株期末(自己株式控除前)時点。有価証券報告書提出日現在は自己株式14,705,300株の消却により383,176,500株
自己株式数13,979,916株自己保有割合3.51%。株式付与ESOP信託口保有分45,700株を含めると約3.53%
1株当たり年間配当120.00円5期の推移は57.50円→60.00円→82.50円→95.00円→120.00円。2027/3期は年間130.00円を予想
配当利回り2.06%参考株価5,822円ベース
連結配当性向30.7%配当方針は「連結配当性向30%以上」(2022年)から「累進配当・株主資本配当率(DOE)3.5%目標」(2026年)へ移行
純資産配当率(DOE実績)2.7%5期の推移は2.0%→1.9%→2.3%→2.3%→2.7%。目標の3.5%に向けて漸進
配当金の総額464.55億円2025年10月30日決議234.21億円+2026年5月8日決議230.34億円の合計
自己株式取得635.31億円前期比+234.71億円。取締役会決議に基づく取得で、当事業年度中に6,223,500株を消却
自己株式の消却14,705,300株2026年6月12日実施(提出日直前)。当期間の保有株式数16,295,279株からの逆算で、消却後の保有自己株式は概算で159万株程度まで圧縮される見込み
ストック型収益に対する配当該当なしセグメント別売上高が抽出データに含まれないため算出不可。参考として配当金総額464.55億円÷連結売上高20,303.02億円=2.29%
大株主上位10社で35.77%日本マスタートラスト信託銀行(信託口)14.79%が最大株主

7. 補足: データの読み方と注意点

参考株価は本記事を作成した時点の値(5,822円、2026年9月4日09:05時点の現在値)を使用しています。時価総額・配当利回り・指標まとめのネットキャッシュ比率は、この参考株価を前提とした参考値で、時価総額の計算では自己株式を控除していません。有価証券報告書の提出日は2026年6月22日で、株価の基準日と3か月弱ずれています。

5年推移表のネットキャッシュ比率は、各期の有価証券報告書提出日の終値と、当時の有価証券報告書に記載された提出日現在の発行済株式総数から算出した、各期ごとの時価総額に基づく参考値です。指標まとめの△31.74%は記事作成時点の参考株価を基準としているため、算出基準が異なり値がずれています。

ネットキャッシュは現金及び預金から有利子負債(短期・長期の借入金、社債等の合計)を差し引いた値です。有価証券は抽出した財務データに該当科目の行が5期とも無いため0円として扱っています。投資有価証券は別の科目として存在しますが、基本の計算式には含めていません。

有価証券報告書の抽出データには、5期とも「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に相当するテキストが含まれていません。そのため、前期比変化・5年推移の要因説明は、損益計算書とキャッシュ・フロー計算書の実額比較、および会社が開示している他の項目(配当政策・経営方針・事業等のリスク)の記述をもとに組み立てた内容を含みます。会社が明示している説明と、実額から推し量った内容は、本文中でできる限り書き分けています。

有価証券報告書の抽出データには、セグメント別の外部顧客売上高・セグメント利益・セグメント資産の情報が含まれていません。本記事の収益構造に関する説明は、事業内容の記述とセグメント別設備投資額・従業員数から組み立てた見立てであり、セグメント別損益の実額に基づくものではありません。

2022/3期の貸借対照表は、2022年6月28日提出の有価証券報告書そのものではなく、2023年6月23日提出の有価証券報告書に比較年度として記載された値を採用しています。両者には流動資産・流動負債・固定負債で差異があり、総資産は約182.67億円、純資産は約119.57億円ずれています。会社の訂正報告書等での明示的な説明は確認できていないため、原因までは特定できていません。本記事では5期間の連続性を優先し、後の年度に記載された値を採用しました。

自己株式の年次推移は、2022/3期と2026/3期は有価証券報告書本文の明記値と一致していますが、2023/3期から2025/3期にかけての年次推移は算出根拠が明確でないため本文には反映していません。

財務諸表は EDINET のデータから自動取得しているため、正確性に欠ける可能性があります

本記事は EDINET 提出の有価証券報告書(第208期、2026年6月22日提出)をもとに作成した情報整理記事です。 特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。 投資判断はご自身の責任でお願いします。