決算分析

株式会社アイシン
2026-03期 有報5年推移分析

公開日: 2026/07/24

営業利益1割増、なのに純利益6割増。その中身を読む

営業利益は1割増、なのに純利益は6割増 ―― アイシン2026年3月期を読む

参考株価と時価総額

項目
前提2026-07-02 時点の参考株価。期末発行済株式総数で算出
株価2218.5円
発行済株式総数759,023,902株
時価総額16,838.9億円

項目前期当期前期比
営業利益2,029億円2,288億円+12.7%
親会社帰属純利益1,076億円1,717億円+59.6%
フリーCF1,929億円2,989億円+54.9%

ようか | 驚き

ちょっと待って待って!

アイシン、純利益が +59.6% ってマジで!?


やよい | 自信あり

うむ、1,717億円 じゃ。

じゃが営業利益の伸びは +12.7% でな。


ようか | キョトン

……あれ?

本業の儲けは1割しか増えてないのに、最後に残る利益は6割増?


やよい | 説明

よいところに気づいたのう。

しかもフリーCFも +54.9% と大きく増えておるが、これにも仕掛けがある。


ようか | 驚き

仕掛けって何!?

気になるから最初から見せて!!


目次

  • 会社概要: 稼ぎ方をひと目で確認
  • 収益構造: 投資して作り替える姿勢
  • 前期からの変化: 利益6割増の中身
  • 当期の注目ポイント: 数字の焦点
  • 5年推移の財務諸表まとめ: 落ち込みからの回復を確認
  • 指標まとめ: 稼ぐ力と安全性
  • 補足: データの読み方と注意点

1. 会社概要: 稼ぎ方をひと目で確認

ようか | 笑顔

アイシンかぁ、トヨタの車の部品を作っている会社だっけー?

やよい姉! 解説よろしく!!


やよい | 説明

うむ!わらわが解説してやるぞ。

アイシンは、AT・ハイブリッド用トランスミッションを軸とする自動車部品の大手じゃ。

ブレーキなどの走行安全、パワースライドドアなどの車体部品まで、幅広く手がけておる。


ゆり | 無表情

まとめたのです

区分内容
主力商品パワートレイン関連(AT・ハイブリッドトランスミッション・eAxle等)
その他商品走行安全関連、車体関連、アフターマーケット、エナジーソリューション等
収益形態新車生産に連動する部品納入が中心のフロー型
開示区分「日本」「北米」「欧州」「中国」「アセアン・インド」の地域別

ようか | キョトン

アイシンって、トヨタ以外にも売ってるの?


ゆり | 無表情

有報によると、トヨタグループ向けが売上の 69.7% なのです。


ようか | 驚き

ほぼトヨタ専属じゃん!?


やよい | あきれ顔

専属とまでは言い過ぎじゃが、依存度は5年前の 62.3% から上がっておる。

一方で、BEV一辺倒からHEVやPHEVへ需要が揺り戻すなか、電動化商材のeAxleから従来のATまで全部そろえる「フルラインアップ」が強みじゃ。


ゆり | 微笑み

電動化への投資を続けながら、どの動力方式にも対応できる形を作っているのですね。


2. 収益構造: 投資して作り替える姿勢

ゆり | 真剣

収益に対する企業姿勢はどうなのでしょう?


やよい | 説明

うむ。よい指摘じゃ。

ざっくり言えば「投資して事業を作り替えていく型」じゃな。

報告書では、電動化・カーボンニュートラルへ年 2,200〜2,700億円 の設備投資と年 2,654億円 の研究開発を続けると明示しておる。


ようか | キョトン

投資ばっかりで、株主には回ってこないの?


やよい | 自信あり

いや、そこが今のアイシンの面白いところでな。

政策保有株の売却と自社株買いで、投資と還元を同時にやっておるのじゃ。


ようか | キョトン

せいさくほゆうかぶ…?


やよい | 説明

取引先との関係維持などのために持っておる、他社の株のことじゃ。

それを売って資金にしつつ、自社株買いで資本効率も引き上げておる。


ゆり | 無表情

守って現状維持するのではなく、投資と株主還元を両方進めているということですね。


やよい | 説明

うむ。そうじゃな。

2028年中計の営業利益率 6.2% 目標へ、今後は利益率改善が続くかを見ていく必要があるな。


3. 前期からの変化: 利益6割増の中身

3-1. 売上高と営業利益

ようか | 笑顔

去年と比べると、利益はすごい増え方だったんだよな!!


やよい | 説明

うむ、冒頭でも触れたが増収増益じゃ。

売上収益は5兆円台に乗り、営業利益は5期で最高を更新したのじゃ。

項目前期比較前期当期
売上収益48,961億円51,178億円
営業利益2,029億円2,288億円
営業利益率4.1%4.5%
親会社帰属純利益1,076億円1,717億円

ようか | キョトン

で、冒頭の謎!

営業利益1割増なのに、純利益が6割増になるカラクリは!?


ゆり | 無表情

有報だと、金融費用が 342億円 減っています。

前期にあった持分法投資の売却損 162億円 も、当期はないのです。


やよい | 説明

そこが種明かしじゃ。

前期は本業の外側の費用で純利益が沈んでおった。

当期はその費用が消えたから、増益幅が大きく見えておるのじゃ。


ようか | 笑顔

本業の外で沈んでた分が、戻ってきただけかー!


3-2. 現金とネットキャッシュ

ようか | 驚き

キャッシュはどうなったの!?


やよい | 説明

現金は大きく積み増しじゃ。

有利子負債の削減も続いておるぞ。

項目前期比較前期当期
現金及び現金同等物4,517億円5,924億円
現金の対資産率10.5%13.1%
有利子負債(リース込み)6,973億円6,860億円
ネットキャッシュ△2,456億円△936億円
ネットキャッシュ比率△14.6%△5.6%

ようか | キョトン

ネットキャッシュはまだマイナスなのか…


ゆり | 無表情

リース負債を除くと、△289億円 まで縮んでいるのです。


やよい | 自信あり

自動車部品は巨額の設備を回す業種じゃから、ある程度の借入はつきものでな。

それを踏まえても、はっきり良くなってきておるぞ。


3-3. フリーCF

ようか | キョトン

フリーCFって、結局いくら残ったの?


やよい | 説明

まずは表で見るのじゃ。

項目前期比較前期当期
営業CF3,399億円3,761億円
投資CF△1,469億円△772億円
フリーCF1,929億円2,989億円

ようか | 驚き

フリーCF、めっちゃ増えてるじゃん!!


やよい | 説明

うむ、前期比 +54.9% の大幅増じゃ。

じゃが、冒頭で言うた仕掛けはここにあるぞ。


ゆり | 無表情

主因をまとめてみたのです

  • 投資CF要因: 政策保有株の売却・償還収入が +1,355億円 増えたのが主因
  • 営業CF要因: 法人税支払の減少 +440億円 が実質的な押し上げ役
  • 相殺要因: 設備投資はむしろ増加(2,189億円 → 2,418億円)し、仕入債務の減少も営業CFを押し下げた

ようか | 驚き

投資CFが軽くなったのは、投資を減らしたからじゃないんだ!?


やよい | 説明

そういうことじゃ。

本業の現金創出は小計ベースで約 4,100億円 と前期並み。

投資を絞ったのではなく、株を売ったお金が入って投資CFが軽く見えておるのじゃ。


ゆり | 微笑み

投資は営業CFの範囲内に収まっているのですね。


やよい | 微笑み

うむ。売上を伸ばすには各地域で設備投資が要る商売じゃから、そこは大事なところじゃな。


4. 当期の注目ポイント: 数字の焦点

ようか | 泣きつく

ゆり姉ぇ~わたしにも分かるようにポイントまとめて~


ゆり | 微笑み

まとめてみました


▶ 売上収益は前期比 +4.5%5兆1,178億円 で、営業利益率は 4.1%→4.5% へ改善なのです。

▶ 親会社帰属純利益は +59.6%(1,717億円) と、営業増益と金融費用減で大幅増なのです。

▶ 手元の現金及び現金同等物は前期比 +31.2%(5,924億円) に積み上がったのです。

▶ フリーCFは前期比 +54.9%(+2,989億円) で、主因は政策保有株の売却収入増なのです。

▶ 配当はDOE起点の方針へ変わり、分割調整後 60円→70円 へ増配なのです。


5. 5年推移の財務諸表まとめ: 落ち込みからの回復を確認

ようか | 笑顔

前期との違いは分かったけど、ちょっと長いスパンで見るとどうなんだ!?


やよい | 説明

うむ、まずは稼ぐ力を見て行こう。


項目5年前4年前3年前2年前当期
売上高39,17444,02849,09648,96151,178
当期純利益1,4193779081,0761,717
営業利益1,8205791,4342,0292,288
営業利益率4.61.32.94.14.5

やよい | 自信あり

ようか、ここから何を見る?


ようか | 自信あり

売上も利益も右肩上がりで、もう死角なしってことだな!


やよい | あきれ顔

そう単純ではないぞ。

2023年3月期は原価率の上昇と減損で利益が急落しており、部品業は原材料や車の生産動向で振れやすいのじゃ。

中計目標の利益率 6.2% にはまだ距離があり、回復の持続力を確認する段階じゃな。


ゆり | 無表情

売上は5年で 3兆9,174億円 から 5兆1,178億円 へ伸びているのです。


やよい | 説明

うむ。利益は2023年3月期に営業利益 579億円 まで沈んだが、そこから3期連続で回復して当期は5期で最高じゃ。

次にキャッシュの流れを追っていくぞ。


項目5年前4年前3年前2年前当期
現金及び現金同等物3,8693,1775,2724,5175,924
現金の対資産率9.27.711.410.513.1
ネットキャッシュ△5,574△5,928△2,675△2,456△936
ネットキャッシュ比率△44.6△47.2△17.3△18.2△5.7
フリーCF△116+511+4,066+1,929+2,989

ゆり | 無表情

有利子負債を返しながら現金を増やして、借金の重さが5年でだいぶ軽くなったということですか?


やよい | 説明

うむ。そういうことじゃな、つまり有利子負債(リース込み)は 9,443億円 から 6,860億円 へ一貫して減っておる。

ネットキャッシュは5年で約 4,600億円 改善しておって、今の調子でフリーCFを稼げればプラスに変わる日も見えてくるのう。


ゆり | 微笑み

さらに詳細に知りたい人向けに、財務諸表をまとめたので、必要な方は以下を見るといいのです。

▼ 財務諸表を見る

ゆり

詳細に知りたい人向けに、財務諸表まとめたのです。

▼ BS(貸借対照表)

項目5年前4年前3年前2年前当期
現金及び現金同等物3,8693,1775,2724,5175,924
流動資産17,32217,29818,97818,30020,403
有形固定資産14,68614,40314,70914,24014,440
総資産42,05841,35846,43042,84645,123
流動負債10,71011,17911,78211,53711,418
固定負債11,38310,26510,6288,9768,744
純資産19,96519,91424,02022,33324,961
自己資本比率41.842.346.046.148.8

▼ PL(損益計算書)

項目5年前4年前3年前2年前当期
売上高39,17444,02849,09648,96151,178
売上原価34,68940,01443,58943,32644,988
売上総利益4,4854,0145,5075,6356,189
営業利益1,8205791,4342,0292,288
親会社帰属純利益1,4193779081,0761,717

▼ CF(キャッシュ・フロー)

項目5年前4年前3年前2年前当期
営業CF1,9332,3804,9973,3993,761
投資CF△2,050△1,869△932△1,469△772
財務CF△1,359△1,278△2,117△2,702△1,820
フリーCF△116+511+4,066+1,929+2,989
現金増減△1,331△677+2,081△756+1,407

(注)各期の連結・IFRS値で表記しています。純資産は非支配持分込み、自己資本比率は親会社所有者帰属持分比率です。固定負債は非流動負債の合計です。

6. 指標まとめ: 稼ぐ力と安全性

やよい | 自信あり

ここまでを大まかにまとめよう。

ようか、最後にまとめるのじゃ。


ようか | 自信あり

利益もキャッシュも立て直して、株主への還元にも本気を出してきた5年ってことだな!


やよい | 説明

うむ。来期以降に答えが出る問いも残しておくぞ。

  • 中計目標の営業利益率6.2%へ、改善は続くか? → 当期4.5%からの距離はまだ大きい。原材料や車の生産動向で振れやすい業種ゆえ、持続力が試される。
  • 政策保有株の売却が一巡した後も、フリーCFは今の水準を保てるか? → 当期の押し上げ役は売却収入。それが消えた後は、本業の現金創出力(約4,100億円)が素の実力になる。
  • トヨタグループ依存69.7%は、強みのままでいられるか? → フルラインアップ戦略の強みと、収益源の集中リスクは表裏一体じゃ。

ゆり | 無表情

さらなる分析用は下を開いて見るのです。

分析用データを見る

指標まとめ(2026年3月期)

やよい: 単純な数値では測れぬが、バリュエーション指標としてはPEREBITDAROICあたりを、財務健全性は流動比率EBITDA/利息あたりを、株主還元余地は現金比率ネットキャッシュ比率を指標として見るとよいぞ。

指標算出値見方
PER約9.8倍時価総額 ÷ 親会社帰属利益。利益に対する株価水準
現金比率13.1%現金及び現金同等物 ÷ 総資産。手元現金の厚み
流動比率179%流動資産 ÷ 流動負債。短期の支払い余力
ネットキャッシュ△936億円現金 − 有利子負債(リース込み)。リース除きは△289億円
ネットキャッシュ比率△5.6%ネットキャッシュ ÷ 時価総額
EBITDA4,934億円営業利益 + 減価償却費及び償却費。本業の現金稼得力
EBITDA/自己資本22.4%EBITDA ÷ 親会社所有者帰属持分
EBITDA/利息約65倍EBITDA ÷ 利息支払額。利払い余力
ROIC5.7%営業利益×0.7 ÷ 投下資本。資本の使い方の効率

リスク

ようか: 有報からの抜粋だぜ!

  • 得意先依存: トヨタグループ向けが売上収益の69.7%を占め、同グループの生産動向の影響を大きく受ける。
  • 通商施策・調達: 各国の通商施策や特定鉱物資源への規制が、原材料・部品調達のリスクとして明示された。
  • 為替・金融市況: 海外売上比率が高く、為替変動や保有株式の市況変動が損益・資本に影響する。
  • 新商品開発・事業投資: 電動化(BEV・PHEV・HEV)の需要変化に対応する開発・投資が想定通り回収できない可能性。
  • 気候変動と環境問題: カーボンニュートラル対応の規制強化や災害の激甚化が事業コストに影響する可能性。

株主還元

ゆり: 株主還元だけを見ての投資はダメですが、長期で買う前提の場合は現在値を知っておきましょう。

  • 発行済株式総数: 759,023,902株(期末時点。2026年5月29日に3,300万株消却済みで、提出日現在は726,023,902株)
  • 自己保有割合: 4.54%(自己株式34,451,032株)
  • 1株当たり配当: 年間70円(中間30円+期末40円、2024年10月の1:3分割調整後)
  • 配当利回り(参考): 約3.16%(参考株価2218.5円ベース)
  • 配当方針: DOE(親会社所有者帰属持分配当率)3.0%水準起点、2028年度に3.5%水準へ引き上げ方針
  • 自社株買い: 当期784億円(前期839億円)。2026年4月に上限1,000億円の新たな取得枠を決議
  • フロー型収益に対する配当割合(参考): 年間配当総額511億円 ÷ 売上収益5兆1,178億円 ≒ 1.0%

7. 補足: データの読み方と注意点

参考株価は本記事作成時点(2026-07-02)の 2218.5円 を使用しています。時価総額や株価依存の指標は、この株価を前提とした参考値です。

会計基準はIFRS(連結)です。「現金及び預金」の代わりに「現金及び現金同等物」を、自己資本比率は親会社所有者帰属持分比率を使用しています。営業利益は日本基準と概念が一部異なります。

ネットキャッシュは現金及び現金同等物から有利子負債(社債及び借入金+リース負債)を差し引いた値です。リース負債を除いた参考値は△289億円です。

5年推移表のネットキャッシュ比率は、各期の有報提出日の終値と当時の発行済株式総数から算出した各期の時価総額に基づく参考値です(終値: 2022-06-20 4,240円/2023-06-19 4,259円/2024-06-20 5,253円/2025-06-16 1,779円/2026-06-12 2,273円)。当時の株価と当時の株式数の組み合わせのため、株式分割の調整は不要です。前期比較・注目ポイント・指標まとめのネットキャッシュ比率は記事作成時点の時価総額に基づくため、5年推移表とは基準が異なります。

2024年10月1日付で1:3の株式分割を実施しています。1株当たり配当などの過去の1株指標は分割調整後で表記しています。

財務諸表は EDINET のデータから自動取得しているため、正確性に欠ける可能性があります。

本記事は EDINET 提出の有価証券報告書(第103期、2026年6月12日提出)をもとに作成した情報整理記事です。

特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。 投資判断はご自身の責任でお願いします。