参考株価と時価総額
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 前提 | 2026-09-09 時点の参考株価。提出日現在の発行済株式総数で算出 |
| 株価 | 2,390円 |
| 発行済株式総数 | 44,213,536株 |
| 時価総額 | 1,056.7億円 |
純利益7倍。それでも本業の物差しは別にある ―― バンドー化学2026年3月期を読む
提出日:2026-06-22 / 会計期:2026年3月期
| 項目 | 前期 | 当期 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 親会社帰属当期利益 | 15.0億円 | 105.7億円 | +606.2% |
| 営業利益 | 34.8億円 | 120.7億円 | +246.9% |
| コア営業利益 | 77.4億円 | 95.5億円 | +23.3% |
ようか | 驚き
純利益が7倍!?
なにがあったらこうなるの!!
やよい | あきれ顔
騒ぐ前に、いちばん下の行を見てみるのじゃ。
ようか | キョトン
……あれ?
一番下だけ、ぜんぜん伸びてない?
やよい | 自信あり
そこじゃ。
会社が「本業の実力」として出しておる数字は、そっちなのじゃ。
ようか | 驚き
え、じゃあ上の7倍ってなんなの!?
やよい | 説明
上と下でものさしが違う。
その差がどこから来たのかを、順に見ていくぞ。
目次
- 会社概要: 伝動ベルトの国内トップ
- 収益構造: 既存3事業で稼ぎ新規へ投資
- 前期からの変化: 純利益7倍と借入の圧縮
- 当期の注目ポイント: 一過性を除いた実力はどこか
- 5年推移の財務諸表まとめ: 本業の線と会計上の利益
- 指標まとめ: 稼ぐ力と財務の状態
- 補足: データの読み方と注意点
1. 会社概要: 伝動ベルトの国内トップ
ようか | 笑顔
バンドー化学かぁ、名前からして「バンド」を作ってる会社だっけー?
やよい姉!解説よろしく!!
やよい | 自信あり
うむ!わらわが解説してやるぞ。
今回はその読みで合っておる。
機械の中で動力を伝える「伝動ベルト」を作っておる会社じゃ。
神戸の会社で1906年創業、2026年4月でちょうど120年になったところじゃな。
ようか | キョトン
伝動ベルトって、どこにあるやつ?
やよい | 説明
いちばん身近なのは車の中じゃ。
エンジンのそばで発電機やエアコンを回しておるベルトがそれじゃな。
あとは工場のコンベヤ、農業機械、スクーターの変速部分にも入っておる。
どれも動いておるうちにすり減るから、定期的に交換される消耗品じゃ。
ゆり | 無表情
まとめたのです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 主力商品・サービス | 自動車部品事業(補機駆動用伝動ベルト、オートテンショナ、二輪・スクーター用変速ベルト)と産業資材事業(産業機械用・農業機械用の伝動ベルト、コンベヤベルト) |
| その他商品 | 高機能エラストマー製品事業(建築資材用・工業用の機能フイルム、精密ベルトや高機能ローラ)、ロボット関連デバイス、電子資材、医療機器、不動産・太陽光発電 |
| 収益形態 | 新車装着向けは生産台数に連動するフロー型。補修市場向けと産業資材は交換需要がベースの準ストック型 |
| 開示区分 | IFRSの連結。自動車部品/産業資材/高機能エラストマー製品の3セグメントと「その他」 |
ようか | 驚き
医療機器!?
ベルトから急に話が飛んでない!?
やよい | あきれ顔
飛んでおるようで、材料はつながっておる。
ゴムや樹脂を狙った形と硬さに仕上げる技術が、そのまま別の製品にも使えるからじゃ。
吸収性の骨再生用材料や、飲み込む動きを測るモニタなどを手がけておる。
ただし規模はまだ小さくて、その他事業ぜんぶ合わせても売上 69.5億円 じゃ。
ゆり | 無表情
新しい柱の候補も置かれているのです。
電子資材では光学用の透明粘着剤シートと高熱伝導シート、医療・ヘルスケアでは骨再生材料などなのです。
スタートアップとの共創にも出資していて、有報には inaho や Inmotive の名前が出ているのです。
ようか | 笑顔
120年もベルト作ってて、まだ新しいことやるんだ!
やよい | 微笑み
やらねば120年も続かぬわ。
なお売上の10%を超える取引先は1社も無い、と会社は書いておる。
一方で生産と販売は米・中・韓・越・泰・印・欧まで広がっておるから、為替が業績へ直に効く会社じゃな。
ゆり | 無表情
海外の子会社では、バンドー・I・C・Sが売上 249.3億円、タイの生産子会社が 228.3億円 なのです。
どちらも連結売上の10%を超える規模なのです。
2. 収益構造: 既存3事業で稼ぎ新規へ投資
ゆり | 無表情
収益に対する企業姿勢はどうなのでしょう?
やよい | 自信あり
うむ。よい指摘じゃ。
中長期計画のCV-1で、会社は既存事業について「成長領域での深化、キャッシュ創出力の最大化」と書いておる。
自動車部品と産業資材が稼ぐ側、新しい電子資材や医療機器が使う側。
そう役割を分けておるのじゃ。
ゆり | 微笑み
当期の設備投資 70.9億円 のうち、自動車部品 29.0億円 と産業資材 24.8億円 で76%を占めているのです。
やよい | 説明
数字のうえでもそのとおりに動いておるな。
ただし設備投資は減価償却の0.74〜1.30倍で動いておって、作る力を一気に増やす投資はしておらん。
維持更新に少し足す程度の水準じゃ。
ようか | キョトン
じゃあ売上ってどうやって増やすの?
やよい | 説明
そこが今後の見どころじゃ。
会社は当期の経営方針で、自動車の電動化が進むから「持続的成長を図るためには事業構造改革が不可欠」とはっきり書いた。
売上の 50.1% が自動車部品で、そこにはエンジン周りの製品も入っておるからのぅ。
電動化対応の製品、世界の補修市場、二輪などのパーソナルモビリティ。
この3方向がどこまで効くかを見ていくことになるな。
ゆり | 真剣
なお電動化の影響がいくらになるかは、有報に実額の開示が無いのです。
やよい | 説明
うむ。どこまで相殺できるかは、今の開示では測りようがないのじゃ。
3. 前期からの変化: 純利益7倍と借入の圧縮
売上・利益はどう動いた?
ようか | 笑顔
去年と比べて売上と利益はどうだったの?
ベルトが飛ぶように売れた感じ!?
やよい | あきれ顔
飛ぶようには売れておらん。
売上の伸びは5期でいちばん低かったのじゃ。
そのかわり、利益率のほうが大きく動いた。
| 項目 | 前期比較 | 前期 | 当期 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | ↑ | 1,155.9億円 | 1,192.6億円 |
| 売上総利益率 | ↑ | 28.4% | 29.9% |
| コア営業利益 | ↑ | 77.4億円 | 95.5億円 |
| コア営業利益率 | ↑ | 6.7% | 8.0% |
| 営業利益 | ↑ | 34.8億円 | 120.7億円 |
| 営業利益率 | ↑ | 3.0% | 10.1% |
| 親会社帰属当期利益 | ↑ | 15.0億円 | 105.7億円 |
ようか | 驚き
冒頭でも見たけど、やっぱり純利益だけ跳ね方がおかしい!
売上ぜんぜん増えてないのに!?
やよい | 説明
まず素直なところから話そう。
増収は +36.6億円 じゃが、売上原価の伸びは +1.0% に留まった。
その差がそのまま粗利 +28.4億円 になっておる。
会社は原材料価格の高騰への対応を続けてきたと書いておるから、当期は値上げが原価の上昇を上回ったのじゃろう。
ようか | キョトン
それが「本業の実力」ってやつ?
やよい | 自信あり
そうじゃ。
コア営業利益 95.5億円 が、その答えじゃな。
ゆり | 無表情
営業利益と純利益の伸びには、別の要因が乗っているのです。
中身を並べてみたのです。
| 要因 | 金額 | 中身 |
|---|---|---|
| 前期の減損損失の反動 | 59.4億円 → 2.4億円 | 前期は連結子会社の減損で営業利益が押し下げられていた |
| 受取保険金など | その他の収益 18.8億円 | 加古川工場の雹災事故に対する受取保険金を含む(内訳の実額は非開示) |
| 持分法投資損益 | 12.2億円 | 合弁会社からの利益。営業利益の10.1%に相当 |
| 実効税率の低下 | 55.6% → 16.3% | 回収可能性のある繰延税金資産を追加計上したと会社が説明 |
ようか | キョトン
雹って、空から降ってくる氷のやつ?
やよい | 説明
そのとおりじゃ。
工場が壊れて、その保険金が当期の収益に乗った。
税金のほうも変わっておってな。
税引前利益が 34.7億円 から 126.5億円 へ増えたのに、損益計算書に乗った法人所得税の費用は 19.3億円 から 20.6億円 とほとんど動いておらん。
ようか | 驚き
利益が4倍近いのに、税金はそのままなの!?
やよい | あきれ顔
そこは喜ぶところではないぞ。
災害の保険金も、この税金の効果も、来期また同じように出てくるものではない。
7倍という数字は、そこを割り引いて読むのじゃ。
手元資金とネットキャッシュは?
ようか | 笑顔
利益が出たってことは、現金もガッポリ増えたんでしょ!?
やよい | 自信あり
そこは素直に増えておるぞ。
しかも借金のほうを大きく減らしておる。
| 項目 | 前期比較 | 前期 | 当期 |
|---|---|---|---|
| 現金及び現金同等物 | ↑ | 177.2億円 | 217.1億円 |
| 現金の対資産率 | ↑ | 14.7% | 16.5% |
| 有利子負債(借入金) | ↓ | 71.4億円 | 52.3億円 |
| ネットキャッシュ | ↑ | 105.8億円 | 164.8億円 |
| 自己資本比率 | ↑ | 68.0% | 70.2% |
ようか | 驚き
借金が19億円も減ってる!!
やよい | 説明
しかも長期の借入金は当期でゼロになった。
残っておるのは短期の 52.3億円 だけじゃ。
現金 217.1億円 のほうがずっと多いから、実質無借金に近い状態と言ってよい。
ゆり | 無表情
現金が増えた理由について、会社の説明があるのです。
「増収に伴う運転資金需要の増加に備え、手元流動性を高めた」と説明しているのです。
やよい | 説明
余ったから積み上がった、という話ではないのじゃな。
狙って厚くした手元資金というわけじゃ。
フリーCFはどうなった?
ようか | 笑顔
フリーCFってやつは!?
やよい | 自信あり
こちらも5期でいちばん大きい数字が出た。
| 項目 | 前期比較 | 前期 | 当期 |
|---|---|---|---|
| 営業CF | ↑ | 107.6億円 | 155.9億円 |
| 投資CF | ↑ | △41.9億円 | △37.0億円 |
| フリーCF | ↑ | 65.8億円 | 118.9億円 |
| 財務CF | ↓ | △69.1億円 | △85.9億円 |
ようか | 驚き
フリーCFが倍近い!!
ゆり | 無表情
増減の中身を分けてみたのです。
| 向き | 項目 | 前年差 |
|---|---|---|
| 押し上げ(営業CF) | 税引前利益 | +91.7億円 |
| うち戻し | 前期の減損の戻し分 | 57.0億円 |
| 相殺(営業CF) | 利息と配当金の受取額 | △5.9億円 |
| 相殺(営業CF) | 減価償却費 | △3.7億円 |
| 相殺(営業CF) | 為替差損益 | △4.5億円 |
| 支出減(投資CF) | 定期預金の払戻超過 | +7.4億円 |
| 支出増(投資CF) | 有形固定資産の取得 | △42.7億円 → △47.3億円 |
| 支出増(財務CF) | 短期借入金 | +9.0億円 → △14.6億円 |
ゆり | 微笑み
営業CFの +48.3億円 は税引前利益の増加が主因ですが、その 57.0億円 が前期の減損の戻しなので、差し引きの寄与は +34.7億円 なのです。
ようか | キョトン
投資のところ、支出が減ってるのに矢印が増えてるのもある?
やよい | 説明
そこが今回いちばん見どころじゃ。
投資CFの支出が小さく見えておるのは、定期預金を戻したぶんが入っておるからじゃ。
設備投資そのものは 59.9億円 から 70.9億円 へ増えておる。
実際の投資負担は、前期より重くなっておるのじゃ。
ゆり | 微笑み
配当 32.4億円 と自己株式取得 20.4億円 を合わせた還元額 52.8億円 は、前期の 52.4億円 とほぼ同じなのです。
やよい | 説明
つまり財務CFの支出が増えたのは、還元を厚くしたからではない。
借入を返したぶんが、そのまま出ておるだけじゃ。
4. 当期の注目ポイント: 一過性を除いた実力はどこか
ようか | 泣きつく
ゆり姉ぇ~わたしにも分かるようにポイントまとめて~😢
ゆり | 微笑み
まとめてみました。
▶ 売上収益は +3.2%(1,192.6億円) で5期のなかで最も低い伸びでしたが、コア営業利益は +23.3%(95.5億円) と大きく伸びたのです。売上原価の伸びが +1.0% に留まったことが効いているのです。
▶ 営業利益 +246.9%(120.7億円)、純利益 +606.2%(105.7億円) の伸びは、前期の減損 59.4億円 の反動と、受取保険金を含むその他の収益 18.8億円、実効税率の 55.6% → 16.3% への低下によるものなのです。反復しない性質の押し上げが含まれているのです。
▶ 手元資金は +22.5%(177.2億円 → 217.1億円) で5期のなかで最も厚い水準なのです。会社は運転資金需要への備えと説明しているのです。
▶ フリーCFは +80.8%(65.8億円 → 118.9億円) で5期の最高値なのです。設備投資は 59.9億円 → 70.9億円 へ増えているのに、営業CFの伸び +48.3億円 がそれを上回ったのです。
▶ ネットキャッシュは 105.8億円 → 164.8億円 へ。ただし比率は 15.6% で、時価総額 1,056.7億円 の一部にとどまるのです。手元資金だけで説明できる水準ではないのです。
▶ 年間配当は 76円 → 120円 で5期連続の増配なのです。うち 20円 は創業120周年の記念配当で、連結配当性向は 46.8%、記念配当を除く100円ベースでは 39.0% なのです。配当と自己株式取得を合わせた総還元額 52.8億円 は営業CF 155.9億円 の 33.9% にあたりますが、記念配当は次期も同じ水準が続く保証はないのです。
▶ ストック型収益の比率は「大きい」とは言えないのです。産業資材と自動車部品の補修市場向けは交換需要ベースですが、補修市場比率の実額開示が無く、切り分けはできないのです。
▶ 中長期計画CV-1に対しては、売上収益1,200億円と ROE12.0% がほぼ達成、コア営業利益120億円だけが 24.5億円 未達と会社自身が示しているのです。
5. 5年推移の財務諸表まとめ: 本業の線と会計上の利益
ようか | 笑顔
前期との違いは分かったけど、ちょっと長いスパンで見るとどうなんだ!?
やよい | 自信あり
うむ、まずは稼ぐ力を見て行こう。
| 項目 | 2022/3期 | 2023/3期 | 2024/3期 | 2025/3期 | 2026/3期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 937 | 1,036 | 1,083 | 1,156 | 1,193 |
| 当期純利益 | 12 | 57 | 62 | 15 | 106 |
| 営業利益 | 27 | 83 | 78 | 35 | 121 |
| 営業利益率 | 2.8% | 8.0% | 7.2% | 3.0% | 10.1% |
やよい | 説明
ようか、ここから何を見る?
ようか | 驚き
利益のグラフがギザギザすぎ!
売上はまっすぐ伸びてるのに、なんで利益だけこんなに暴れてんの!?
やよい | 説明
よく気づいたのぅ、そこが本題じゃ。
凹んでおる2022/3期と2025/3期は、どちらも減損損失が出た年じゃ。
金額は 43.3億円 と 59.4億円。
2025/3期はのれんも 45.9億円 から 11.8億円 へ落ちておる。
ゆり | 無表情
会社独自のコア営業利益で並べると、まったく違う形になるのです。
| 項目 | 2022/3期 | 2023/3期 | 2024/3期 | 2025/3期 | 2026/3期 |
|---|---|---|---|---|---|
| コア営業利益(億円) | 58.8 | 67.3 | 75.8 | 77.4 | 95.5 |
| コア営業利益率 | 6.3% | 6.5% | 7.0% | 6.7% | 8.0% |
| 減損損失(億円) | 43.3 | 0.1 | 14.3 | 59.4 | 2.4 |
ようか | キョトン
コア営業利益って、なんかズルくない?
都合の悪いのを外してるだけっぽいけど。
やよい | 説明
疑うのはよい態度じゃ。
コア営業利益は売上収益から売上原価と販管費だけを引いたもので、減損も保険金も持分法の利益も入っておらん。
たしかに悪いものも外れるが、よいものも外れておる。
当期でいえば、保険金も持分法の 12.2億円 も入っておらぬのじゃ。
ようか | キョトン
じゃあ、どっちが本当なの?
やよい | 自信あり
どちらも本当じゃよ。
会計上の利益はその年に起きたことを全部乗せた数字。
コア営業利益は、本業だけを毎年おなじ物差しで測るための数字じゃな。
ゆり | 無表情
そのコア営業利益は5期とも増益なのです。
減損が出た2022/3期と2025/3期も、コアベースでは +19.1% と +2.1% の増益だったのです。
やよい | 自信あり
そして事業ごとに見ると、伸びの出どころもはっきりしておる。
| セグメント売上収益 | 2022/3期 | 2023/3期 | 2024/3期 | 2025/3期 | 2026/3期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 自動車部品事業(億円) | 418.3 | 492.0 | 532.8 | 580.6 | 604.0 |
| 産業資材事業(億円) | 333.0 | 353.5 | 366.7 | 381.0 | 388.1 |
| 高機能エラストマー製品事業(億円) | 140.0 | 147.9 | 137.7 | 142.2 | 144.2 |
| 高機能エラストマーのコア営業利益(億円) | 2.8 | 3.6 | -1.5 | -0.2 | 4.3 |
ようか | 驚き
エラストマーってやつ、2年連続でマイナスじゃん!
やよい | 説明
OA機器向けの製品が中心でな。
顧客に採用されるかどうかで売上が決まる事業じゃ。
2024/3期は採用機種が減って 10.2億円 の減収となり、そのまま赤字に沈んだ。
当期は 4.3億円 の黒字へ戻したが、5期を通せば売上は +3.0% しか伸びておらん。
ようか | キョトン
じゃあ会社が伸びてるのって、ほとんど車のおかげってこと!?
やよい | 自信あり
売上の伸びに限れば、そういうことになるのぅ。
自動車部品は5期で +44.4% じゃ。
さて、次にキャッシュの流れを追っていくぞ。
| 項目 | 2022/3期 | 2023/3期 | 2024/3期 | 2025/3期 | 2026/3期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 188 | 168 | 179 | 177 | 217 |
| 現金及び預金の対資産率 | 16.2% | 14.1% | 14.3% | 14.7% | 16.5% |
| ネットキャッシュ | 50 | 52 | 104 | 106 | 165 |
| ネットキャッシュ比率 | 11.5% | 8.0% | 11.5% | 14.7% | 16.8% |
| フリーCF | 91 | 37 | 93 | 66 | 119 |
ゆり | 無表情
フリーCFは5期ともプラスなのです。
2023/3期だけ 37億円 へ落ちていますが、これは何が起きた期なのですか?
やよい | 説明
理由は2つ重なっておる。
ひとつは法人所得税の支払いが 19.5億円 から 41.0億円 へ増えたこと。
もうひとつは、前期にあった資本性金融商品の売却収入 31.6億円 が 1.3億円 まで消えたことじゃ。
ようか | キョトン
じゃあ稼ぐ力が落ちたわけじゃないんだ?
やよい | 微笑み
うむ。税金の支払いと、前の年の一時的な収入が消えただけの期じゃな。
ゆり | 無表情
ネットキャッシュのほうは 50億円 から 165億円 へ増えているのです。
これは現金が増えたから、ということですか?
やよい | 説明
そういう理解の仕方もあるが、本当は借入を返した効果のほうが大きい。
現金は5期で 188億円 → 217億円 と 29億円 しか増えておらん。
一方で借入金は 138.3億円 → 52.3億円 と 86億円 減っておる。
ようか | キョトン
稼いだお金って、どこ行ったんだ?
やよい | 微笑み
きちんと行き先はあるぞ。
5期の営業CF累計は 577.2億円 じゃ。
そこから設備投資に 292.1億円、配当と自己株式取得に 199.8億円、借入金の圧縮に 86億円。
足すとほぼ使い切っておる計算になるのぅ。
ゆり | 無表情
その間に自己資本比率は 62.0% から 70.2% へ上がっているのです。
利息の支払いへの耐性を示すEBITDA/支払利息も、70.7倍 から 152.4倍 なのです。
やよい | 自信あり
外から借りずに、自前で設備も配当もまかなった5年ということじゃ。
財務の心配はほぼ要らぬ水準まで来ておる。
ゆり | 微笑み
さらに詳細に知りたい人向けに、財務諸表をまとめたので、必要な方は以下を見るといいのです。
▼ 財務諸表を見る
ゆり
詳細に知りたい人向けに、財務諸表まとめたのです。
▼ BS(貸借対照表)
| 項目 | 2022/3期 | 2023/3期 | 2024/3期 | 2025/3期 | 2026/3期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 現金及び預金 | 188 | 168 | 179 | 177 | 217 |
| 流動資産 | 592 | 605 | 636 | 634 | 683 |
| 有形固定資産 | 330 | 325 | 325 | 305 | 327 |
| 総資産 | 1,164 | 1,190 | 1,256 | 1,207 | 1,319 |
| 流動負債 | 285 | 322 | 325 | 313 | 336 |
| 固定負債 | 154 | 88 | 77 | 69 | 54 |
| 純資産 | 724 | 780 | 855 | 825 | 929 |
| 自己資本比率 | 62.0% | 65.3% | 67.8% | 68.0% | 70.2% |
▼ PL(損益計算書)
| 項目 | 2022/3期 | 2023/3期 | 2024/3期 | 2025/3期 | 2026/3期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 937 | 1,036 | 1,083 | 1,156 | 1,193 |
| 売上原価 | 661 | 742 | 772 | 828 | 836 |
| 売上総利益 | 277 | 294 | 310 | 328 | 356 |
| 営業利益 | 27 | 83 | 78 | 35 | 121 |
| 親会社帰属純利益 | 12 | 57 | 62 | 15 | 106 |
▼ CF(キャッシュ・フロー計算書)
| 項目 | 2022/3期 | 2023/3期 | 2024/3期 | 2025/3期 | 2026/3期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業CF | 96 | 77 | 141 | 108 | 156 |
| 投資CF | △5 | △40 | △47 | △42 | △37 |
| 財務CF | △99 | △64 | △90 | △69 | △86 |
| フリーCF | 91 | 37 | 93 | 66 | 119 |
| 現金増減 | △0 | △21 | 12 | △2 | 40 |
(連結・IFRS、単位は億円。現金及び預金は現金及び現金同等物、純資産は資本、自己資本比率は親会社所有者帰属持分比率を指す。現金増減は為替変動の影響を含む)
6. 指標まとめ: 稼ぐ力と財務の状態
やよい | 自信あり
ここまでを大まかにまとめよう。
ゆり | 無表情
5期の起点と当期を並べたのです。
| 項目 | 5年前 | 当期 |
|---|---|---|
| コア営業利益 | 58.8億円 | 95.5億円 |
| コア営業利益率 | 6.3% | 8.0% |
| 有利子負債(借入金) | 138.3億円 | 52.3億円 |
| ネットキャッシュ | 50.1億円 | 164.8億円 |
| 自己資本比率 | 62.0% | 70.2% |
やよい | 説明
会計上の営業利益は減損で上下したが、コアで見れば本業は一度も後退しておらん。
財務のほうも、長期借入金は当期に完済しておる。
ようか | キョトン
じゃあ、ほんとの実力ってどのくらいなの?
やよい | 説明
当期の営業利益 120.7億円 のうち 25.2億円 は受取保険金や持分法の利益じゃ。
純利益 105.7億円 にも繰延税金資産の追加計上が効いておる。
そこを外したコア営業利益の 95.5億円 を物差しにするのがよいのぅ。
ゆり | 無表情
事業の内訳も置いておくのです。
5期の増収 +255億円 のうち、自動車部品が +186億円 を占めるのです。
高機能エラストマー製品は5期で +3.0% にとどまり、2期の赤字を経て当期 4.3億円 の黒字へ戻ったところなのです。
やよい | 説明
つまり伸びの出どころが自動車部品に偏っておる、ということじゃな。
そこへ会社自身が電動化を理由に「事業構造改革が不可欠」と書いた。
売上の 50.1% を占める事業の話じゃ。
対応策がどこまで効くかは実額の開示が無いゆえ、今は測れぬ。
ようか、最後にまとめるのじゃ。
ようか | 自信あり
コア営業利益は5年ずっと増えてて、借金もほとんど無くなった!
そのうえ配当も5期連続で増えてるんだから、次はどこまで伸ばせるか楽しみだな!
ゆり | 微笑み
さらなる分析用は下を開いて見るのです。
分析用データを見る
指標まとめ(2026年3月期)
やよい: 単純な数値では測れぬが、バリュエーション指標としてはPERやEBITDAやROICあたりを、財務健全性は流動比率やEBITDA/利息あたりを、株主還元余地は現金比率やネットキャッシュ比率を指標として見るとよいぞ。
| 指標 | 算出値 | 見方 |
|---|---|---|
| PER | 10.00倍 | 時価総額1,056.70億円 ÷ 親会社帰属当期利益105.68億円。有報記載の期末株価ベースは7.87倍 |
| 現金比率 | 64.6% | 現金217.07億円 ÷ 流動負債335.83億円。短期の支払いを現金でどこまで賄えるか |
| 流動比率 | 203.5% | 流動資産683.32億円 ÷ 流動負債335.83億円。5期を通じて188〜208%で安定 |
| ネットキャッシュ | 164.78億円 | 現金217.07億円 − 有利子負債(借入金)52.29億円 |
| ネットキャッシュ比率 | 15.6% | ネットキャッシュ164.78億円 ÷ 時価総額1,056.70億円 |
| EBITDA | 175.23億円 | 営業利益120.73億円 + 減価償却費54.50億円。一過性の収益を含む点に注意 |
| EBITDA/自己資本 | 18.9% | EBITDA175.23億円 ÷ 自己資本926.08億円 |
| EBITDA/利息 | 152.4倍 | EBITDA175.23億円 ÷ 支払利息1.15億円。利払い負担への耐性 |
| ROIC | 8.64% | 税引後営業利益 ÷ 投下資本(自己資本926.08億円 + 借入金52.29億円)。5期では2.2%→8.6% |
リスク
ようか: 有報からの抜粋だぜ!。
- 海外取引拡大に伴うリスク: 米・中・韓・越・泰・印・欧などに生産販売網を持ち、為替変動、各国の政治・経済情勢、法規制の変更が業績に影響する。当期は「貿易・関税政策を巡る不確実性」が新たに経営環境として挙げられた。
- リコール発生に伴うリスク: 自動車部品を扱うため、製品不具合が大規模な回収・補償につながる可能性。
- 原材料の市況変動および調達に伴うリスク: ゴム・樹脂などの原材料価格の高騰と調達難。会社は価格転嫁を継続課題として挙げている。
- 自然災害や感染症等の発生に伴うリスク: 当期は加古川工場で雹災事故が実際に発生し、受取保険金の計上に至った。
- 保有資産の価値変動に伴うリスク: 5期のうち3期で実際に減損損失として顕在化している(2022/3期43.3億円、2024/3期14.3億円、2025/3期59.4億円)。
- なお、この5項目の記載は5期を通じて見出し・本文とも実質的に変わっていない。発生可能性や影響度を定量化する開示には移行していない。
株主還元
ゆり: 株主還元だけを見ての投資はダメですが、長期で買う前提の場合は現在値を知っておきましょう。
| 項目 | 数値 | 補足 |
|---|---|---|
| 発行済株式総数 | 44,213,536株 | 2023年6月14日に自己株式3,000千株を消却し、47,213,536株から減少 |
| 自己株式数 | 3,157,187株 | 自己保有割合7.14%。役員報酬BIP信託の304千株を加えると3,461千株・7.83%相当 |
| 1株当たり年間配当 | 120円 | 中間40円+期末80円。期末には創業120周年の記念配当20円を含む |
| 配当利回り | 5.02% | 参考株価2,390円ベース。記念配当を除く100円では4.18% |
| 連結配当性向 | 46.8% | 記念配当を除く100円ベースでは39.0%。方針は「1株26円を下限、連結配当性向50%を目処」 |
| 配当方針の変化 | 40%→50% | 2022/3期は目処40%。2023/3期の有報から50%へ引き上げられ、以降変更なし |
| 配当の推移 | 40→52→72→76→120円 | 5期連続増配で3.0倍。減損で純利益が落ちた2022/3期・2025/3期も減配していない |
| 自己株式取得 | 20.4億円 | 5期連続で実施。2026年5月14日決議で上限1,300千株・20億円の新枠を設定済み |
| 総還元額 | 52.8億円 | 配当32.4億円+自己株20.4億円。営業CF155.92億円の33.9%に相当 |
| ストック型収益との関係 | 該当なし | 補修市場向けの比率が非開示のため、ストック型収益に対する配当割合は算出できない。参考として年間配当総額49.4億円はコア営業利益95.5億円の51.8% |
| 大株主 | 上位10名で49.88% | バンドー共栄会12.00%、日本マスタートラスト信託9.42%、三井住友銀行4.99%、明治安田生命4.87%、みずほ銀行4.39%と政策保有色が強い |
補足
参考株価は本記事を作成した時点の値(2,390円、2026-09-09時点)を使用しています。時価総額・PER・配当利回り・指標まとめのネットキャッシュ比率は、この株価を前提とした参考値で、自己株式は控除していません。
5年推移表とグラフのネットキャッシュ比率は、各期の有価証券報告書の提出日終値と、当時の提出日現在の発行済株式総数から算出した各期の時価総額に基づく参考値です。指標まとめの当期の値(15.6%)とは算出の前提が異なるため、5年推移表の当期の値(16.8%)と一致しません。
財務数値は連結・IFRSベースで整理しています。日本基準の「売上高」は売上収益、「純資産」は資本、「自己資本」は親会社の所有者に帰属する持分を読み替えています。
コア営業利益は「売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出」する会社独自の指標で、持分法投資損益やその他の収益・費用を含みません。IFRSの営業利益とは異なります。
ネットキャッシュは現金及び現金同等物から有利子負債(借入金)を差し引いた値です。有価証券は抽出した財務データに該当科目の行が無いため0円として扱っています。リース負債は「その他の金融負債」に含まれ内訳が取れないため、本記事の有利子負債には含めていません。リース負債を含む保守的なベースでも、ネットキャッシュは23.6億円から136.2億円へ増加という方向は変わりません。
当期の受取保険金の金額、為替が売上・利益へ与えた影響額、地域別売上、補修市場向けの売上比率は、いずれも有価証券報告書に実額の開示がありません。原価改善の寄与額の内訳や、電動化への対応がどこまで効くかについても実額では追い切れないため、本記事では断定していません。
2025/3期の減損損失について、連結側の開示は「連結子会社に係る減損損失」までで具体名がありません。提出会社単体の注記に医療機器子会社の関係会社株式評価損32.4億円が記載されていることから、連結ののれん減損もこの子会社が中心とみられますが、これは開示ではなく推し量った推定を含みます。
当期の純利益には、繰延税金資産の追加計上による押し上げが含まれます。実効税率は55.6%から16.3%へ低下しており、この効果は反復しない性質のものです。参考株価ベースのPER10.0倍もこの一過性を含んだ数値です。
財務諸表は EDINET のデータから自動取得しているため、正確性に欠ける可能性があります
本記事は EDINET 提出の有価証券報告書(第103期、2026年6月22日提出)をもとに作成した情報整理記事です。 特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。 投資判断はご自身の責任でお願いします。