決算分析

小野薬品工業株式会社
2026-03期 有報5年推移分析

公開日: 2026/07/18

まだ回復期 | 有価証券報告書 2026年3月期

参考株価と時価総額

項目
前提記事作成時点の参考株価で算出
株価2,446円
発行済株式総数498,692,800株
時価総額12,198.0億円

増益だがまだ回復期 ―― 小野薬品工業2026年3月期

提出日:2026-06-15 / 会計期:2026年3月期

項目前期当期前期比
売上収益4,869億円5,158億円+5.9%
営業利益598億円922億円+54.4%

ようか | 驚き

ちょっと待って待って!

小野薬品、営業利益 922億円+54.4% って、爆益じゃん!!

流れが来てるのか!?


やよい | あきれ顔

短期の上下だけで騒ぐでない。

2期前の営業利益は 1,599億円 だったのじゃ。

前期は 598億円922億円 が当期じゃな。


ようか | キョトン

あれ、じゃあここ2年間がしょぼい…?


やよい | 自信あり

そうとも言えぬ。

実は、この会社、1年前に大きな買い物をしておっての。

何があったのか、順に見ていくぞ。


目次

  • 会社概要
  • 収益構造
  • 前期からの変化
  • 当期の注目ポイント
  • 5年推移の財務諸表まとめ
  • 指標まとめ
  • 補足

1. 会社概要: オプジーボと次の柱

ようか | 笑顔

小野薬品工業かぁ、薬を作ってる会社だっけー?

やよい姉!解説よろしく!!

やよい | 自信あり

うむ!大きくはその認識であってるぞ!

小野薬品工業は大阪発の医療用医薬品メーカーじゃ。

稼ぎ頭はがん免疫治療薬のオプジーボと、同じ仕組みの抗体薬から入るロイヤルティ収入じゃな。

ゆり | 無表情

まとめたのです

区分内容
主力商品・サービスがん免疫治療薬「オプジーボ」と抗PD-1/PD-L1抗体関連のロイヤルティ収入
その他商品米Deciphera社の「キンロック」「ロンビムザ」、糖尿病・循環器などの医薬品
収益形態国内販売 + ロイヤルティ + 米欧での自社販売
開示区分医薬品事業の単一セグメント

やよい | 説明

2024年6月に米国の デシフェラ・ファーマシューティカルズ(※) を買収し、

※ Deciphera Pharmaceuticals Inc

そして冒頭で触れた「大きな買い物」がこれじゃ。

支出は 3,648.2億円 にのぼった。

ようか | 驚き

で、デシ…!? 何!?

って、3,600億!?

ゆり | 無表情

直前終値に対して 74.7% のプレミアム(1株あたり:$25.6=約$24億)での買収でした。

ようか | 笑顔

デシなんとかの株持ってた人うらやまー

やよい | あきれ顔

デシフェラ・ファーマシューティカルズ、、

まぁ覚えんでよいが..

ゆり | 無表情

なぜ買収に踏み切ったのでしょうか?

やよい | 説明

うむ。これまで欧米に対してライセンスアウト(※)中心じゃったが、

欧米で薬を開発して売り切る体制作りたくて

まるごと手に入れたのじゃな。

※ ライセンス(使用権)を提携先に提供して資金を受けること

ゆり | 無表情

国内のオプジーボとロイヤルティで稼ぎ、

次の柱を欧米の自社販売で育てる会社になったのですね。

2. 収益構造: 研究開発へ全力投資

ゆり | 無表情

収益に対する企業姿勢はどうなのでしょう?

やよい | 自信あり

うむ。よい指摘じゃ。

報告書では、医療用医薬品の研究開発を主力分野と位置づけておる。

実際、当期の研究開発費は 1,470.4億円 で、売上収益のおよそ 28.5% に達するのじゃ。

ようか | キョトン

売上の3割ちかくを研究に?

工場建ててるとか?

やよい | 説明

工場などの設備投資は年 60億円 ほどと軽いのじゃ。

お金の使い道は研究開発、買収、新薬候補のライセンス導入に集中しておるな。

ゆり | 微笑み

設備ではなく、研究開発と買収に投資して伸ばす姿勢、ということですね。

やよい | 説明

うむ。そうじゃな。

今後は買収した欧米自社販売の立ち上がりと、

導入した新薬候補の開発進捗を見ていく必要があるな。

3. 前期からの変化: 買収翌年、財布が先に戻った

売上・利益はどう動いた?

ようか | 笑顔

去年と比べて売上と利益は?

利益は爆上がりだったよね?

やよい | 説明

売上収益は過去最高じゃ

冒頭でもあったが利益は「大幅増益でもまだ回復途上」かの

項目前期比較前期当期
売上収益4,869億円5,158億円
営業利益598億円922億円
営業利益率12.3%17.9%

ゆり | 無表情

当期は原価率が 30.4% から 27.5% へ改善し、

売上総利益が +351.5億円 増えたのです。

やよい | 説明

前期は買収初年度のコストが一気に乗って、利益が急減しておった。

2期前の営業利益 1,599億円 と比べればまだ6割弱じゃな。

ゆり | 無表情

研究開発費と販管費も合わせて 48億円 ほど減ってますね。

ようか | 笑顔

買収が今後どう働くかが注目ポイントだな!

手元資金とネットキャッシュは?

ゆり | 無表情

キャッシュの事情はどうなってるのでしょうか?

やよい | 説明

前期の買収資金で借入が増えておったが

当期は返済が進み、手元のお金はむしろ増えておるぞ。

項目前期比較前期当期
現金及び現金同等物2,046億円2,370億円
現金の対資産率19.2%21.4%
有利子負債1,467億円1,209億円
ネットキャッシュ624億円1,162億円
ネットキャッシュ比率5.1%9.5%

ゆり | 無表情

大幅に改善しているのです

やよい | 説明

ネットキャッシュは 624億円 から

1,162億円 へ大きく回復しておる。

ゆり | 真剣

ただし買収前のネットキャッシュは 1,573億円 あったのです。

まだそこまでは戻っていないのです。

やよい | 説明

有報だけじゃと企業の姿勢は分からんが、

この1年で負債を圧縮しておるから、元の水準には

戻しに行っているように思えるの

フリーCFはどうなった?

ようか | 泣きつく

フリーCFって前はマイナスだったんでしょ?

今期はどうなったのー

やよい | 説明

慌てるでない。

前期のマイナスは、買収という一度きりの出来事のせいじゃ。

当期は大きくプラスに戻っておるぞ。

項目前期比較前期当期
営業CF825億円1,368億円
投資CF△1,368億円△399億円
フリーCF△543億円970億円

ゆり | 無表情

営業CFも +543.6億円 の改善です。

内訳は、税引前利益 +333.3億円 に加え、

法人税の支払いが 276.5億円 減ったのです。

やよい | 説明

前期は2期前の高い利益に対する納税が重かった。

投資CFは、前期にあった買収支出 3,648.2億円 が消えたのが主因じゃ。

ゆり | 真剣

一方で、新薬候補のライセンス導入などで

無形資産の取得が +446.9億円 増えました

※ 大型導入対価は推定です

やよい | 説明

この会社は工場への設備投資が軽く、

営業CFがそのまま手元に残りやすいのじゃ。

その代わり、研究開発費や新薬のライセンス導入には、

これからもお金を使い続ける前提じゃな。

ゆり | 微笑み

稼ぎの使い道が、借金返済と次の新薬への投資に向かっているのです。

4. 当期の注目ポイント: 数字の焦点

ようか | 泣きつく

ゆり姉ぇ~わたしにも分かるようにポイントまとめて~😢

ゆり | 微笑み

まとめてみました


▶ 売上収益は前期比 +5.9% と増加し過去最高。営業利益は +54.4%(+324.9億円) の大幅増益なのです。

▶ 手元資金(現金及び現金同等物)は前期比 +15.9% と増加したのです。

▶ フリーCFは △543.2億円→969.6億円 へ黒字転換。主因は前期の買収支出 3,648.2億円 の剥落なのです。

▶ ネットキャッシュは前期比 +86.3%1,161.7億円。ただし買収前の水準には未達です。

▶ 売上収益の約50%台半ばはオプジーボと抗PD-1/PD-L1抗体関連ロイヤルティ。このうちロイヤルティ部分は、契約と特許に基づく期限付きのストック型収益なのです。

5. 5年推移の財務諸表まとめ: 山と谷の5年

ようか | 笑顔

前期との違いは分かったけど、ちょっと長いスパンで見るとどうなんだ!?

やよい | 自信あり

うむ、まずは稼ぐ力を見て行こう。


項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
売上高3,6144,4725,0274,8695,158
当期純利益8051,1271,280501698
営業利益1,0321,4201,599598922
営業利益率28.6%31.7%31.8%12.3%17.9%

やよい | 説明

ようか、ここから何を見る?

ようか | 自信あり

当期はガツンと戻してるから、来年にはピーク超えだな!

やよい | あきれ顔

当期の 922億円 はピークの6割弱にすぎぬ。

研究開発費は年 1,470億円 前後で高止まりしておるから、

この先は欧米販売と新薬の伸び次第じゃ。

ゆり | 真剣

営業利益と営業利益率が戻ってくるかが見所ですね

やよい | 説明

利益の形は上下あるが、業態的に中々安定は難しいの。

やよい | 自信あり

次にキャッシュの流れを追っていくぞ。


項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
現金及び預金6919611,6612,0462,370
現金及び預金の対資産率9.3%10.9%18.2%19.2%21.4%
ネットキャッシュ6048701,5736241,162
ネットキャッシュ比率3.6%6.2%14.7%8.0%10.3%
フリーCF6795941,587△543970

ゆり | 無表情

キャッシュは徐々に積みあがってますが、

ネットキャッシュの上下は大きいのです

やよい | 説明

うむ。

先ほども触れたが、前期に買収へ 3,648.2億円 を使い、

借入 1,500億円 も実行したのじゃ。

業態的に研究開発が費用として大きいので、

これでもキャッシュは安定しているとみるべきじゃな

ゆり | 微笑み

なるほど。理解できました。

さらに詳細に知りたい人向けに、財務諸表をまとめたので、必要な方は以下を見るといいのです。

▼ 財務諸表を見る

ゆり

詳細に知りたい人向けに、財務諸表まとめたのです。

▼ BS(貸借対照表)

項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
現金及び預金6919611,6612,0462,370
流動資産2,8133,4514,1364,5514,683
有形固定資産1,1211,0841,0481,0571,014
総資産7,3928,8249,13710,64011,065
流動負債6591,2291,0361,4831,636
固定負債1161171141,275862
純資産6,6177,4787,9867,8828,566
自己資本比率88.7%84.1%86.8%73.5%76.9%

▼ PL(損益計算書)

項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
売上高3,6144,4725,0274,8695,158
売上原価9351,1011,2711,4801,417
売上総利益2,6793,3713,7553,3893,741
営業利益1,0321,4201,599598922
親会社帰属純利益8051,1271,280501698

▼ CF(キャッシュ・フロー計算書)

項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
営業CF6181,5961,1078251,368
投資CF60△1,003481△1,368△399
財務CF△602△325△898943△655
フリーCF6795941,587△543970
現金増減81270700384325

(連結・IFRSベース、単位は億円。現金及び預金は現金及び現金同等物、売上高は売上収益、純資産は資本合計、固定負債は非流動負債、現金増減は為替影響込みの期末残高増減を指す)

6. 指標まとめ: 稼ぐ力と安全性

やよい | 自信あり

ここまでを大まかにまとめよう。

ようか、最後にまとめるのじゃ。

ようか | 自信あり

オプジーボに続く柱が欧米で育てば、利益もキャッシュも戻ってくるはず!

キンロックと新しいお薬の伸びに注目だな!

やよい | 説明

うむ。来期に向けた問いを置いておくぞ。

  • 欧米自社販売は数字になって見えてくるか? → 買収の答え合わせは、キンロックなど欧米売上の伸びでしか確かめられぬ。
  • 営業利益はピークへの道筋に乗るか? → 年 1,470億円 前後で高止まりする研究開発費を、売上の伸びで吸収できるかが焦点じゃ。
  • 配当性向はめどの40%へ戻るか? → 利益の回復が続かなければ、3期据え置きの 80円 配当の重さが変わってくるのじゃ。

ゆり | 微笑み

さらなる分析用は下を開いて見るのです。

分析用データを見る

指標まとめ(2026年3月期)

やよい: 単純な数値では測れぬが、バリュエーション指標としてはPEREBITDAROICあたりを、財務健全性は流動比率EBITDA/利息あたりを、株主還元余地は現金比率ネットキャッシュ比率を指標として見るとよいぞ。

指標算出値見方
PER17.48倍時価総額 ÷ 親会社帰属純利益。利益に対する株価の高さ
現金比率21.4%現金及び現金同等物 ÷ 総資産。資産に占める現金の厚み
流動比率286.2%流動資産 ÷ 流動負債。短期の支払い余力
ネットキャッシュ1,161.7億円現金同等物に短期の有価証券等を加え、有利子負債を差し引いた値
ネットキャッシュ比率9.5%ネットキャッシュ ÷ 時価総額
EBITDA1,299.9億円営業利益 + 減価償却費及び償却費。本業の資金創出の目安
EBITDA/自己資本15.3%EBITDA ÷ 自己資本。資本に対する稼ぐ力
EBITDA/利息36.73倍EBITDA ÷ 支払利息。利払いの余力
ROIC6.7%税引後営業利益 ÷ 投下資本。2期前の14.1%から買収で低下

リスク

ようか: 有報からの抜粋だぜ!

  • 特定の製品への依存: オプジーボと抗PD-1/PD-L1抗体関連ロイヤルティで売上収益の約50%台半ばを占める。薬価改定、競合品の出現、特許保護期間の満了で売上が減少する可能性。
  • 新製品開発の失敗: 胃がん1次治療・膀胱がん術後補助療法の第3相試験が主要評価項目未達で開発中止になるなど、開発の不確実性が高い。
  • 欧米自社販売の失敗: ライセンスアウト中心から自社販売への転換が計画どおり進まない可能性。
  • 無形資産・のれんの減損: 買収で無形資産+のれんは約3,762億円まで拡大し、自己資本の約44%に相当。計画未達時は減損の可能性。
  • 薬価政策: 日本の薬価引き下げに加え、当期から米国の最恵国待遇大統領令など米国薬価政策への言及が明示化。

株主還元

ゆり: 株主還元だけを見ての投資はダメですが、長期で買う前提の場合は現在値を知っておきましょう。

  • 発行済株式総数: 498,692,800株
  • 自己株式数: 20,387,189株(自己保有割合 約4.1%)
  • 1株当たり年間配当: 80円(中間40円・期末40円。累進配当方針+配当性向40%めど)
  • 配当利回り: 約3.3%(参考株価2,446円ベース)
  • 配当性向: 連結ベース約53.9%(単体開示値は47.1%。利益急減により40%めどを超過)
  • オプジーボとロイヤルティで売上の約50%台半ばを占め、このうちロイヤルティ部分は期限付きのストック型収益。ただし製品別実額の開示は無く、配当との対応割合は算出できない
  • 自己株式取得は2022/3期に300.1億円、2024/3期に500.1億円(消却実施)。買収後の直近2期は休止中

補足

参考株価は本記事を作成した時点の値(2,446円、2026-07-06時点)を使用しています。

財務数値は連結(IFRS)ベースで整理しています。IFRSの営業利益は日本基準の営業利益と概念が異なるため、日本基準の会社と比較する際は注意してください。

時価総額・PER・配当利回り・ネットキャッシュ比率は参考株価を前提とした参考値で、自己株式は控除していません。

ネットキャッシュは、現金及び現金同等物に短期の有価証券等を加えた手元資金から、有利子負債(借入金+リース負債)を差し引いた値です。5年推移表のネットキャッシュ比率は、各期の有報提出日の終値と当時の発行済株式総数から算出した各期の時価総額に基づく参考値です(終値: 2022-06-24 3,266円/2023-06-23 2,728円/2024-06-21 2,140円/2025-06-19 1,564円/2026-06-15 2,265円)。前期比較・注目ポイント・指標まとめのネットキャッシュ比率は記事作成時点の時価総額に基づくため、5年推移表とは基準が異なります。

本記事が参照した抽出データには経営成績の増減説明(MD&A)の本文が含まれないため、前期の利益急減や営業CF増減の内訳は財務データ明細からの分析者推定を含みます。

期末配当40円は2026年6月18日開催予定の定時株主総会の決議事項であり、提出時点では予定です。

財務諸表は EDINET のデータから自動取得しているため、正確性に欠ける可能性があります

本記事は EDINET 提出の有価証券報告書(第78期、2026年6月15日提出)をもとに作成した情報整理記事です。 特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。 投資判断はご自身の責任でお願いします。