決算分析

エーザイ株式会社
2026-03期 有報分析

公開日: 2026/07/01

増収なのに減益。手元の余裕も5年で半減した決算を読む

売上は最高益ペース、でも利益と財布は細った ―― エーザイ2026年3月期を読む

参考株価と時価総額

項目
株価3,872円
発行済株式総数291,649,149株
時価総額11,292.7億円

売上増 ―― エーザイ2026年3月期

項目前期当期前期比
売上収益7,894億円8,254億円+4.6%

ようか | 驚き

ねえねえ、エーザイの売上、過去最高ペースなんでしょ!?


やよい | 自信あり

うむ、8,254億円 じゃ。


ようか | 自信あり

じゃあ大勝利?


やよい | 自信あり

さて、どうじゃろうな…これからゆっくり見て行くとしよう。


ようか | 驚き

何!?

なんかあんのか!?


目次

  • 会社概要: 稼ぎ方をひと目で確認
  • 収益構造: 投資して伸ばす姿勢
  • 前期からの変化: 増収なのに減った利益
  • 当期の注目ポイント: 数字の焦点
  • 5年推移の財務諸表まとめ: 山谷を確認
  • 指標まとめ: 稼ぐ力と安全性
  • 補足: データの読み方と注意点

1. 会社概要: 稼ぎ方をひと目で確認

ようか | 笑顔

エーザイって、お薬を作ってる会社だっけー?

やよい姉!! 解説よろしく!!


やよい | 自信あり

うむ! わらわが解説してやるぞ。

エーザイは医療用医薬品を世界で売る製薬会社じゃ。


ゆり | 無表情

まとめたのです

区分内容
主力商品・サービスアルツハイマー病治療剤「レケンビ」、抗がん剤「レンビマ」
その他商品てんかん・パーキンソン病など神経領域の医薬品ほか
収益形態地域別5セグメント(日本・北米・中国・欧州他・アジア他)で医薬品を販売
開示区分「医薬品事業」「その他事業」

やよい | 説明

アルツハイマー病治療剤「レケンビ」

いまや53の国と地域で承認を取っておる、一番の注目どころじゃ。

抗がん剤「レンビマ」は一般名の知名度こそ高くないものの、

エーザイを代表するグローバル主力抗がん剤として知られる存在じゃ!


ようか | 驚き

すごい!!

世界のエーザイだ!!


ゆり | 無表情

新薬を生み出して世界に売り出すグローバル企業、と覚えておけばよいのです。

2. 収益構造: 投資して伸ばす姿勢

ゆり | 無表情

収益に対して、会社はどんな姿勢なのでしょう?


やよい | 自信あり

うむ。よい指摘じゃ。

報告書を読むと、研究開発に毎年 1,600億円 前後をかけておる。

売上のおよそ2割じゃな。


ようか | キョトン

2割って、けっこうだね…


やよい | 説明

新薬を出し続けねば売上が伸びぬ業種じゃ。

だから攻めの投資は継続せざるをえん。


ゆり | 微笑み

投資を先に出して、新薬で伸ばす会社ということですね。


やよい | 説明

そうじゃな。

今後は「レケンビ」がどこまで伸びるか、ここを見ていく必要があるな。

3. 前期からの変化: 増収なのに減った利益

売上は増えたのに、利益が減ったわけ

ようか | キョトン

冒頭の話に戻るけど、売上が増えれば利益も増えるんじゃないの?


やよい | 説明

そう単純ではないぞ。

確かに売上は増えた

しかし、営業利益額も率もむしろ減っておる。

項目前期当期前期比較
売上収益7,894億円8,254億円
営業利益544億円441億円
営業利益率6.9%5.3%

ようか | キョトン

なぜ…?


ゆり | 無表情

売上原価が増えて粗利率が下がり、販売費もかさんでいるのです。


やよい | 説明

あとで中期目線でどうなのか見ていこう

手元の現金とネットキャッシュ

ようか | 驚き

キャッシュはどうなってるの!?


やよい | 説明

当期はどちらも前期より減っておる。

項目前期当期前期比較
現金及び現金同等物2,656億円2,454億円
現金の対資産率19.1%16.9%
有利子負債998億円1,348億円
ネットキャッシュ1,657億円1,106億円

ゆり | 無表情

現金が減り、借入が増えているのです。


やよい | あきれ顔

その結果、ネットキャッシュは 551億円 も減少しておるな

フリーCFの中身が入れ替わった

ようか | キョトン

フリーCFは?


やよい | 説明

金額はほぼ横ばいじゃが、中身がだいぶ動いておる。

項目前期当期前期比較
営業CF301億円613億円
投資CF△101億円△418億円
フリーCF200億円195億円
  • 営業CF要因: 運転資本や税金支払のタイミングで +312億円
  • 投資CF要因: 無形資産の取得、子会社の取得(126億円

ゆり | 無表情

営業CFは増えてますが、無形資産やM&Aの投資が膨らんだのです。


ようか | 驚き

稼ぎは増えたのに、投資も同じくらい増えてるんだ!?


ゆり | 無表情

フリーCFは前期並みですね。

ようか | 驚き

いってこいか!!

やよい | 真剣

創薬企業は、常に新薬への投資が先行している

増収でも、それを投資に入れていく必要があるのじゃ

ゆり | 無表情

特許切れで、後発品参入リスクもありますね

やよい | 真剣

うむ。まさにレンビマの一部基本特許が2025-2027年に満了する(※)件がそうじゃな

じゃからよけいに新薬の開発が重要になってくるのじゃ


※注:単純に2027年から一斉に後発が流れ込んできて崩れるということではない

※注:米国では後発品申請をめぐる訴訟・和解があり、実際の参入時期は相手先や条件により異なる


4. 当期の注目ポイント: 数字の焦点

ようか | 泣きつく

ゆり姉ぇ~わたしにも分かるようにポイントまとめて~


ゆり | 微笑み

まとめたのですよ(ヨシヨシ


▶ 売上高は前期比 +4.6% と増加。一方で営業利益率は 6.9%→5.3% に低下。

▶ 手元資金(現金同等物)は前期比 △7.6% と減少。

▶ フリーCFは 200億円→195億円 とほぼ横ばい。中身は投資CFの拡大が主因。

▶ ネットキャッシュは前期比 △551億円 と縮小。借入増と現金減が重なったのです。

5. 5年推移の財務諸表まとめ: 山谷を確認

ようか | 自信あり

前期との違いは分かったけど、もっと長いスパンで見るとどうなの?


やよい | 自信あり

うむ、まずは稼ぐ力を見て行こう。


項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
売上高7,5627,4447,4187,8948,254
当期純利益479554424464386
営業利益538400534544441
営業利益率7.11%5.38%7.20%6.89%5.35%

やよい | 説明

ようか、ここから何を見る?


ようか | 自信あり

んー

直近の売上が増加してる!!


やよい | あきれ顔

もう少し広く見るのじゃ

利益は増減が大きく、売上の伸びに反して減少傾向じゃろ。


ゆり | 真剣

利益を確保するための投資が乗っているという状況です


ようか | 焦り

なるほど!


やよい | 説明

売上の伸びがそのまま利益に乗らぬのが、いまのエーザイじゃな。


やよい | 自信あり

次はキャッシュの流れを追っていくぞ。


項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
現金及び預金3,0962,6743,0472,6562,454
現金及び預金の対資産率25.0%21.2%21.9%19.1%16.9%
ネットキャッシュ2,1471,8241,6991,6571,106
ネットキャッシュ比率18.7%15.9%14.8%14.7%9.8%
フリーCF888-245307200195

ゆり | 無表情

ネットキャッシュが毎年すり減っているのです。

やよい | 説明

うむ。

配当を1株 160円 で保ちつつ、新薬への投資も続けておる。

その差額が手元資金とネットキャッシュを削っておるのじゃ。

ゆり | 無表情

さらに詳しく知りたい人向けに財務諸表をまとめたので、必要な方は以下を見るといいのです。

▼ 財務諸表を見る

ゆり

ご覧くださいです。

▼ BS(貸借対照表)

項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
現金及び現金同等物3,0962,6743,0472,6562,454
流動資産6,4066,2227,2307,2777,616
有形固定資産1,6991,6661,6491,5811,610
固定資産(非流動資産)5,9876,4116,7086,5896,875
総資産12,39312,63413,93813,86514,491
流動負債3,1332,9893,0453,7233,403
固定負債(非流動負債)1,5441,4181,9041,4831,837
純資産7,7158,2268,9908,6609,251
自己資本比率56.7%61.2%57.8%53.4%51.8%

▼ PL(損益計算書)

項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
売上高7,5627,4447,4187,8948,254
売上原価1,7481,7781,5531,6881,912
売上総利益5,8145,6665,8646,2066,342
営業利益538400534544441
親会社帰属純利益479554424464386

▼ CF(キャッシュ・フロー計算書)

項目2022/3期2023/3期2024/3期2025/3期2026/3期
営業CF1,176△18560301613
投資CF△288△227△253△101△418
財務CF△490△245△227△578△611
フリーCF888△245307200195
現金増減609△423373△391△201

(自己資本比率は提出会社・単体の参考値。流動・固定の一部は当期のみ取得)

6. 指標まとめ: 稼ぐ力と安全性

やよい | 自信あり

最後に指標まとめを置いておくぞ

ようか | 自信あり

「レケンビ」が伸びて欲しいな!

ゆり | 微笑み

さらなる分析用は下を開いて見るのです。

分析用データを見る

指標まとめ(2026年3月期)

やよい: 単純な数値では測れぬが、バリュエーション指標としてはPEREBITDAROICあたりを、財務健全性は流動比率EBITDA/利息あたりを、株主還元余地は現金比率ネットキャッシュ比率を指標として見るとよいぞ。

指標算出値見方
PER29.29倍時価総額 ÷ 親会社帰属純利益。利益に対する株価の高さ
現金比率16.9%現金及び現金同等物 ÷ 総資産。資産に占める現金の厚み
流動比率223.8%流動資産 ÷ 流動負債(流動負債 3,402.5億円)
ネットキャッシュ1,106億円現金及び現金同等物 − 有利子負債。正味の余裕資金
ネットキャッシュ比率9.8%ネットキャッシュ ÷ 時価総額
EBITDA837億円営業利益 + 減価償却費等。本業の資金創出の目安
EBITDA/自己資本9.31%EBITDA ÷ 自己資本。資本に対する稼ぐ力
EBITDA/利息15.69倍EBITDA ÷ 支払利息。利払いの余力
ROIC2.99%営業利益×0.7 ÷ 投下資本。投じた資本の効率

リスク

ようか: 有報からの抜粋だぜ!。

  • レケンビの価値最大化: 診断・治療パスウェイの構築や価格設定が進まないと、期待した収益が得られない可能性。
  • レンビマの価値最大化: 米メルク社との併用試験の結果次第。2026年1月に米メディケア薬価交渉プログラムの対象薬に選定され、薬価引き下げ見込み。
  • 知的財産: 米国でレンビマの後発品申請に関する訴訟が係属。特許切れで売上が急減する可能性。
  • 医療費抑制策: 日米欧中の薬価引き下げ。中国の集中購買などで売上計画に影響する可能性。
  • のれん・無形資産の減損: のれん残高約2,592億円の多くがアメリカス医薬品事業に配分。計画未達時に減損の可能性。
  • その他: 製品品質・安定供給(関税・地政学含む)、データ信頼性、情報セキュリティ、気候変動、人財確保。

株主還元

ゆり: 株主還元だけを見ての投資はダメですが、長期で買う前提の場合は現在値を知っておきましょう。

  • 発行済株式総数: 291,649,149株
  • 自己株式数: 9,535,293株(自己保有割合 約3.3%)
  • 1株当たり年間配当: 160円(中間80円・期末80円)
  • 配当利回り: 約4.1%(参考株価3,872円ベース)
  • 配当総額: 約451億円(当期、CFベース)

補足

参考株価は本記事を作成した時点の値(3,872円)を使用しています。

財務数値は、特記なき限り連結(IFRS)ベースで整理しています。

有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」表は提出会社(単体・日本基準)で数値が異なるため、本記事の損益・CF・BSとは混在させていません。

時価総額・PER・ネットキャッシュ比率は参考株価を前提とした参考値で、各期の期末株価ではありません。

財務諸表は EDINET のデータから自動取得しているため、正確性に欠ける可能性があります。

本記事は EDINET 提出の有価証券報告書(第114期、2026年6月12日提出)をもとに作成した情報整理記事です。

特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。 投資判断はご自身の責任でお願いします。