決算分析

株式会社アイ・ピー・エス
2026-03期 有報5年推移分析

公開日: 2026/07/11

最高益の裏で膨らむネットデット | 有価証券報告書 2026年3月期

参考株価と時価総額

項目
前提2026-06-26 時点の参考株価。提出日現在の発行済株式総数で算出
株価3,295円
発行済株式総数13,082,400株
時価総額431.1億円

過去最高の利益、なのに財布はマイナスへ ―― アイ・ピー・エス2026年3月期を読む

提出日:2026-06-12 / 会計期:2026年3月期

項目前期当期前期比
親会社帰属当期純利益25.4億円42.0億円+64.9%

ようか | 驚き

ねえ、アイ・ピー・エスって純利益が +64.9% だって!

増収増益だし、利益率も31%超え。すごい好調じゃん!


やよい | あきれ顔

たしかに、稼ぐ力はぐっと上がった。


ようか | キョトン

なにかあるのか?


やよい | 自信あり

そうじゃな。

では、その稼ぎを何に回しているのか。順に見ていくぞ。


目次

  • 会社概要: 稼ぎ方をひと目で確認
  • 収益構造: 投資先行で売上を伸ばす姿勢
  • 前期からの変化: 直近の動き
  • 当期の注目ポイント: 数字の焦点
  • 5年推移の財務諸表まとめ: 山谷を確認
  • 指標まとめ: 稼ぐ力と安全性
  • 補足: データの読み方と注意点

1. 会社概要: フィリピンの国際通信を卸す

ようか | 笑顔

アイ・ピー・エスかぁ、何の会社だっけー?

やよい姉! 解説よろしく!!

やよい | あきれ顔

うむ!わらわが解説してやるぞ。

アイ・ピー・エスは、フィリピンと北米・香港・シンガポールを結ぶ国際通信回線を、

現地のCATV事業者や通信事業者へ卸しておる。

持株会社と子会社8社からなる通信グループじゃ。

ゆり | 無表情

まとめたのです

区分内容
主力事業国際通信事業(売上の 76.1%
その他事業国内通信事業、メディカル&ヘルスケア事業
収益形態国際通信回線の卸売と法人向けインターネット接続
開示区分「国際通信」「国内通信」「メディカル&ヘルスケア」

ようか | 自信あり

回線を仕入れて、売る。

転売みたいなもんか!

やよい | あきれ顔

雑にまとめるでない。

長期の回線使用権を仕入れ、卸売と回線リースで継続的に課金する形じゃ。

C2C回線の取得で、キャリアズキャリアの立場を確立した点が大きいのう。

ようか | 驚き

ストップ!

C2C回線?キャリアズキャリア?

呪文にしか聞こえないんだけど!?

ゆり | 無表情

C2Cは、日本・香港・シンガポール・フィリピンなど、アジアの主要都市を海底でつなぐ大容量ケーブル網の名前です。

この会社は、そのケーブルを長期間使う権利を買いました。

やよい | 説明

海底ケーブルを自前で敷くと莫大な費用がかかるからのう。

出来上がった回線の使用権を仕入れる方が、早くて確実というわけじゃ。

これでフィリピン第3の国際通信キャリアになったのじゃぞ。

ようか | キョトン

ふむふむ。

で、キャリアズキャリアってのは?

やよい | 自信あり

「通信会社に回線を売る、通信会社のための通信会社」のことじゃ。

客が個人ではなく通信会社じゃから、1件の契約が大きく、長く続きやすいのう。

ゆり | 微笑み

フィリピンの高い経済成長を背景に、通信インフラ投資を先行させて伸ばす会社、ということですね。

2. 収益構造: 先に投資して、成長を取りに行く

ゆり | 真剣

この会社は、収益をどう伸ばそうとしているのでしょう。

やよい | 説明

よい問いじゃ。

姿勢は「先行投資で成長を取りに行く」と整理できるのう。

報告書では海底ケーブルへの参画や国内基幹網の整備を掲げ、

今後数年の投資が将来の事業拡大に重要と明示しておる。

ゆり | 無表情

回線という基盤に投資を積み増して、卸売の土台を広げている、ということですね。

やよい | 説明

うむ。

卸売は継続課金性が比較的高いストック型寄りじゃが、売上拡大には投資が連動する構造じゃ。

今後は 先行投資が計画どおり回収に向かうか を見ていく必要があるな。

3. 前期からの変化: 利益は最高、財布は反対方向

3-1. 売上高と営業利益: 採算が一段上がった

ようか | 笑顔

去年と比べて、儲けは増えたのか減ったのか、どっち!?

やよい | 説明

落ち着くがよい。

売上も営業利益もしっかり増えておる。利益率も上がり、稼ぐ力は前期から一段強まったのじゃ。

項目前期当期前期比較
売上高152.6億円170.0億円
営業利益44.1億円53.7億円
営業利益率28.9%31.6%
親会社帰属当期純利益25.4億円42.0億円

ゆり | 無表情

親会社帰属当期純利益は前期比 +64.9% と大きく伸びました。

キャリアズキャリア化で採算が改善したのが効いたのです。

ようか | キョトン

あれ?営業利益は +21.7% なのに、純利益は +64.9%

なんで純利益だけ、そんなに増えるんだ?

ゆり | 無表情

営業の外の損益が大きかったようです。

やよい | 説明

為替が前期の差損 2.8億円 から当期は差益 5.2億円、それだけで約 8億円 の押し上げ、

さらに受取利息・配当金も 1.7億円 増えておるな

ようか | 驚き

そんなにか!

ゆり | 無表情

その結果、経常利益は大きく伸びたのですね

3-2. 現金とネットキャッシュ: ここで冒頭の「マイナス」

ようか | 驚き

手持ちのキャッシュはどうなったの!?

やよい | 説明

現金は減り、ネットキャッシュのマイナスは一段と落ち込んでおる。

項目前期当期前期比較
現金及び預金39.2億円35.8億円
現金の対資産率9.33%7.02%
有利子負債100.7億円126.4億円
ネットキャッシュ△61.5億円△90.5億円

投資を借入で賄う段階が続き、有利子負債がさらに積み上がったからのう。

ゆり | 真剣

有利子負債は3年前から100億円規模が続き、当期はさらに積み増したのです。

3-3. フリーCF: 稼いだ以上に投資した

ようか | キョトン

フリーCFって、結局いくら残ったの?

やよい | 説明

うむ、当期は △25.0億円 のマイナスじゃ。

営業CFは大きく回復したが、それを上回る投資支出が出たのじゃ。

項目前期当期前期比較
営業CF7.0億円45.9億円
投資CF△25.4億円△70.9億円
フリーCF△18.4億円△25.0億円

やよい | 自信あり

マイナスが続いた中身はこうじゃ。

  • 営業CF要因: 純利益の増加と運転資金負担の緩和で営業CFが +38.8億円 回復(プラス側の主因)
  • 投資CF要因: 海底ケーブル「Candle」参画と国内基幹網整備で投資CFが △70.9億円 へ拡大(マイナス側の主因)
  • 相殺関係: 営業CFの回復を投資支出が上回り、フリーCFはマイナスのまま

ゆり | 無表情

売上を伸ばすには投資が増える構造で、投資非連動で稼げる段階ではないのです。

当期はその投資負担が、はっきり表れた年なのです。

ようか | 泣きつく

設備投資が大変なのかー

ゆり | 微笑み

現金の減少も、稼ぐ力の低下というより

投資原資へ資金を回した結果ということなのです。

4. 当期の注目ポイント

ようか | 泣きつく

ゆり姉ぇ~わたしにも分かるようにポイントまとめて~

ゆり | 微笑み

まとめたのです


▶ 売上高は前期比 +11.4%、営業利益は +21.7% と増収増益です。

▶ 手元の現金及び預金は前期比 △8.7% と減少です。

▶ フリーCFは △25.0億円 とマイナスが続いたのです。

▶ フリーCFマイナスの主因は、海底ケーブル等への投資支出 △70.9億円 なのです。

▶ ネットキャッシュは △90.5億円 で、マイナス幅は前期からさらに拡大なのです。


5. 5年推移の財務諸表まとめ: 山谷を確認

ようか | 笑顔

前期との違いは分かったけど、もっと長いスパンで見るとどうなんだ!?

やよい | 説明

うむ、まずは稼ぐ力から見ていこう。


項目5年前4年前3年前2年前当期
売上高107124141153170
当期純利益1923282542
営業利益2533394454
営業利益率22.9326.8027.5528.9031.59

やよい | 自信あり

ようか、ここから何を見る?

ようか | 驚き

利益率がずっと右肩上がりで伸び方がすごいな!

やよい | 説明

うむ。

売上は5期連続で積み上がり、5年で 約1.6倍 じゃ。

営業利益率も22.9%から31.6%へ一貫して上がっておる。

ゆり | 真剣

純利益は2025期に一時的に伸び悩みましたが

はっきり伸びているのです

ようか | 笑顔

ほら、いい感じじゃん!

やよい | 説明

うむ。

ではどれほどキャッシュが積まれているか確認してみよう


項目5年前4年前3年前2年前当期
現金及び預金57.868.842.339.235.8
現金の対資産率31.3827.3812.629.337.02
ネットキャッシュ+27.3-0.5-58.7-61.5-90.5
ネットキャッシュ比率+6.3-0.1-13.6-14.3-21.0
フリーCF+9.2-28.7-53.1-18.4-25.0

ようか | 焦り

あれ!?

景色がガラっと変わった!?

ゆり | 無表情

フリーCFは5期のうち4期がマイナスです

やよい | 説明

稼いだ現金を上回る投資を、毎期入れてきたのじゃ。

ネットキャッシュも5年前の +27.3億円 から4年前にプラスを失い、

当期は △90.5億円 までマイナスが深くなっておる。

冒頭の「マイナスの財布」は、5年続いた投資先行の延長線にある。

ゆり | 微笑み

さらに詳しく知りたい方は、以下に財務諸表をまとめたので見てみてください。

▼ 財務諸表を見る

ゆり

詳細に知りたい人向けに、財務諸表まとめたのです。

▼ BS(貸借対照表)

項目5年前4年前3年前2年前当期
現金及び預金57.868.842.339.235.8
流動資産120.2142.7178.6236.4259.6
有形固定資産37.881.7115.7128.8189.0
総資産184.2251.3335.3420.3509.8
流動負債78.7122.5125.3167.5188.9
固定負債14.210.158.143.064.5
純資産91.4118.6151.8209.8256.4
自己資本比率38.7135.4233.0730.8833.05

▼ PL(損益計算書)

項目5年前4年前3年前2年前当期
売上高107.3123.5141.2152.6170.0
売上原価66.165.170.469.971.3
売上総利益41.258.370.882.898.7
営業利益24.633.138.944.153.7
親会社帰属純利益18.922.928.425.442.0

▼ CF(キャッシュ・フロー)

項目5年前4年前3年前2年前当期
営業CF35.826.4△5.77.045.9
投資CF△26.6△55.1△47.4△25.4△70.9
財務CF+10.7+35.8+23.1+13.8+20.4
フリーCF+9.2△28.7△53.1△18.4△25.0
現金増減+19.9+7.1△30.0△4.6△4.6

(注)各期の連結値で表記しています。親会社帰属純利益は「主要な経営指標等」記載値を用いています。

6. 指標まとめ: 稼ぐ力と安全性

やよい | 自信あり

ようか、最後にまとめるのじゃ

ようか | 自信あり

採算がしっかり改善してて、攻めの投資に踏み込んでる成長フェーズって感じだな!

ゆり | 無表情

さらに細かい指標は、下を開いて見るのです。

分析用データを見る

指標まとめ(2026年3月期)

やよい: 単純な数値では測れぬが、バリュエーション指標としてはPEREBITDAROICあたりを、財務健全性は短期返済比率EBITDA/利息あたりを、株主還元余地は現金比率ネットキャッシュ比率を指標として見るとよいぞ。

指標算出値見方
PER約10.2倍参考株価3,295円 ÷ EPS322.41円。利益に対する株価水準
現金比率7.02%現金及び預金 ÷ 総資産。手元現金の厚み
短期返済比率183.0%短期返済額(短期借入+1年内長借)÷ 現金及び預金
ネットキャッシュ△90.5億円現金及び預金 − 有利子負債(実質ネットデット)
ネットキャッシュ比率△21.0%ネットキャッシュ ÷ 時価総額
EBITDA約63.1億円営業利益 + 減価償却費等。本業の現金稼得力
EBITDA/自己資本37.44%EBITDA ÷ 自己資本
EBITDA/利息約21.0倍EBITDA ÷ 支払利息。利払い余力
ROIC約12.75%営業利益×0.7 ÷ 投下資本(有利子負債+自己資本)

リスク

ようか: 有報からの抜粋だぜ!。

  • 海外事業リスク: 拠点4か国(日本・フィリピン・シンガポール・米国)や取引先所在国の経済・規制・税制の変更、インフラ停止、人件費上昇などの影響を受けるリスク。
  • フィリピンのカントリーリスク: 賃金上昇による人材確保難、物価高騰、台風・火山等の自然災害による通信障害、治安悪化などのリスク。
  • 国際通信事業リスク: 子会社が保有する仮免許の更新不可リスク、大手2社(PLDT・Globe Telecom)との競合・寡占進行、特定仕入先への回線調達依存のリスク。

株主還元

ゆり: 株主還元だけを見ての投資はダメですが、長期で買う前提の場合は現在値を知っておきましょう。

  • 発行済株式総数: 13,082,400株(2026年3月31日現在)。発行可能株式総数39,960,000株
  • 潜在株式: ストックオプションによる潜在株式数532,100株(発行済株式総数の4.07%)
  • 1株当たり配当: 年間40円(25円→40円へ増配後、当期は横ばい)
  • 配当利回り(参考): 約1.21%(参考株価3,295円ベース)
  • 配当方針: 将来の事業展開と財務体質強化に必要な内部留保を優先し、業績を反映した継続配当を基本とする

7. 補足: データの読み方と注意点

参考株価は本記事作成時点(2026-06-26)の 3,295円を使用しています。時価総額や株価依存の指標は、この株価を前提とした参考値です。

ネットキャッシュは現金及び預金から有利子負債(短期借入金+1年内返済予定の長期借入金+長期借入金)を差し引いた値です。各期の有利子負債は各年度の有価証券報告書記載値から算出しています。ネットキャッシュ比率は各期のネットキャッシュを時価総額431.1億円(参考株価ベース)で割った参考値です。

当期の有利子負債は短期借入金46.3億円・1年内返済予定長期借入金19.2億円・長期借入金60.9億円の合計126.4億円です。

財務諸表は EDINET のデータから自動取得しているため、正確性に欠ける可能性があります。

本記事は EDINET 提出の有価証券報告書(第35期、2026年6月12日)をもとに作成した情報整理記事です。

特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。 投資判断はご自身の責任でお願いします。