決算分析

アスクル株式会社
2026-05期 有報5年推移分析

公開日: 2026/08/04

現金は減っていないのに332億円悪化 | 有価証券報告書 2026年5月期

参考株価と時価総額

項目
前提2026-08-03 時点の参考株価。提出日現在の発行済株式総数で算出
株価1,272円
発行済株式総数89,771,300株
時価総額1,141.9億円

現金は減っていない。それでも332億円が消えた ―― アスクル2026年5月期を読む

提出日:2026-07-30 / 会計期:2026年5月期

項目前期当期前期比
現金及び預金484.23億円493.32億円+1.9%
ネットキャッシュ121.84億円△210.21億円△332.05億円
短期借入金3.80億円272.80億円+269.00億円

ようか | キョトン

一番上は増えてるのに、真ん中はマイナスに突き抜けてる?


やよい | 自信あり

そこじゃ。

手元の現金はほとんど減っておらぬ。

それでも差し引きは 332.05億円 悪くなった。


ようか | 驚き

え、現金あるのに悪くなるの!?

どういうこと!!


やよい | 説明

一番下の行を見てみよ。


ようか | 驚き

……借りてるお金、桁が変わってる!


やよい | あきれ顔

気づいたか。

現金の残高は同じでも、その現金がどこから来たかが変わったのじゃ。


ようか | キョトン

なんでそんなことに?


やよい | 説明

この会社に、この期だけ起きたことがあってな。

そこから順に見ていくぞ。


目次

  • 会社概要: オフィス通販とロジスティクス
  • 収益構造: 立て直しと選択投資の3年計画
  • 前期からの変化: 5期で初の減収と赤字
  • 当期の注目ポイント: 数字の焦点
  • 5年推移の財務諸表まとめ: 伸びた4期と当期の反転
  • 指標まとめ: 稼ぐ力と財務の状態
  • 補足: データの読み方と注意点

1. 会社概要: オフィス通販とロジスティクス

ようか | 笑顔

アスクルかぁ、明日来るからアスクルだよなー?

やよい姉!解説よろしく!!

やよい | 自信あり

うむ!わらわが解説してやるぞ。

名前の由来はだいたい合っておる。

事業所へ注文の翌日に届ける通販から始まった会社じゃ。

いまはそこに、一般の人向けの「LOHACO」と、物流を請け負う会社がぶら下がっておる。

ようか | キョトン

え、会社が2つあるの?

やよい | 説明

数え方でいうと、当社と子会社16社じゃな。

稼ぎ方で分けると、商品を仕入れてネットで売るeコマース事業と、

荷物を預かって運ぶロジスティクス事業の2つになる。

売上の中身はほぼ前者じゃ。

ゆり | 無表情

まとめたのです。

区分内容
主力商品・サービスeコマース事業。OA・PC用品、事務用品、オフィス生活用品、オフィス家具、食料品、酒類、医薬品、化粧品、MRO商材、ペット用品などの通販。チャネルは事業所向けの ASKUL、一般消費者向けの LOHACO、グループ会社に分かれる
その他商品ロジスティクス事業(ASKUL LOGIST による保管・物流・配送の請け負い)、水の製造販売(嬬恋銘水)
収益形態都度の商品販売が中心のフロー型。ただし事業所の消耗品補充は反復性が高く、会社もお客様生涯価値(LTV)の最大化を営業戦略の軸に置いている
開示区分日本基準の連結。報告セグメントは eコマース事業/ロジスティクス事業の2区分と「その他」

ようか | 驚き

売ってるもの多すぎ!

文房具の会社だと思ってた!

やよい | あきれ顔

そこは商売の形が広がっただけじゃ。

事業所に毎日届ける仕組みを一度持てば、そこに載せる商品は何でもよい。

だから薬も酒もペット用品も並ぶのじゃ。

ゆり | 無表情

売り方にも特徴があるのです。

ASKUL事業は「エージェントモデル」なのです。

会社とお客様の間に販売店が入って、新規開拓と代金の回収を担当します。

注文と配送は会社が直接やって、代金は販売店を通して受け取る形ですね。

やよい | 説明

顧客を集める費用と、代金を取りはぐれる手間を外へ出しておる形じゃな。

そのぶん販売店には仕切価格との差額が渡る。

このモデルで30年やってきた会社ということじゃ。

ゆり | 無表情

株主の顔ぶれも押さえておきたいのです。

LINEヤフーが自己株式を除いた発行済株式総数の 46.89%

プラス株式会社が 11.54% を持っています。

LINEヤフーは「その他の関係会社」で、親会社等はいないと会社は記載しているのです。

ようか | 驚き

会社の株、半分近く持ってるところがあるんだ!?

2. 収益構造: 立て直しと選択投資の3年計画

ゆり | 無表情

収益に対する企業姿勢はどうなのでしょう?

やよい | 自信あり

うむ。よい指摘じゃ。

2025年7月に、2026年5月期から2029年5月期までの中期経営計画を出しておる。

掲げておる柱は3つ。

収益構造の改革、新しい価値提供領域の確立、そしてセキュリティ対策の強化じゃ。

ようか | キョトン

3つ目、なんか他の2つと毛色ちがくない?

やよい | 説明

よいところに気づいたな。

3つ目は当期に起きたことを受けて加わった柱じゃ。

残り2つが伸ばす話で、3つ目は守りを固め直す話になっておる。

ゆり | 無表情

会社が置いた数字も並べておくのです。

項目2027年5月期 見通し2029年5月期 コミット目標
連結売上高4,900億円5,400億円
連結営業利益率1.4%3.7%
連結ROE8.3%20.0%

ようか | 驚き

来年の利益率、めちゃくちゃ低くない!?

やよい | 説明

そこが会社の見立てじゃ。

売上は翌期にほぼ戻すが、利益の戻りは3年がかりと置いておる。

新しい領域のほうは、実証実験で新規事業を試して、成長投資枠でM&Aや協業も進める計画じゃ。

2035年に既存事業と新規事業の利益割合をEBITDAベースで50対50にする、という遠い目標も書いてある。

ゆり | 微笑み

まず立て直して、そのうえで選んで投資していく、ということですね。

やよい | 自信あり

うむ。そうじゃな。

ただしこの商売は、売上を伸ばそうとすると出荷する場所と受注のシステムを先に増やさねばならぬ。

ゆり | 無表情

当期の設備投資をまとめてみました。

項目金額
設備投資の総額133.30億円
うち物流センター新設69.68億円
うち新しいWEBサイト構築10.53億円

ようか | 驚き

売る前から、こんなにお金がかかるんだ!

やよい | 説明

今後は、投資の重さに利益の回復が追いつくかを見ていく必要があるな。

3. 前期からの変化: 5期で初の減収と赤字

売上と利益:減らなかった費用

ようか | 笑顔

やよい姉ぇ、去年と比べて売上と利益はどうだったの?

冒頭でも触れてたけど、この期だけ何かあったんだろ!

やよい | 説明

そのとおりじゃ。

ただ落ち方の形が特徴的でな。

まずは表で見るのじゃ。

項目前期比較前期当期
売上高4,811.01億円4,001.99億円
営業利益140.04億円△174.45億円
営業利益率2.91%△4.36%
親会社株主帰属純利益90.68億円△221.50億円

ようか | 驚き

売上が1割以上減ってるのに、利益はマイナスまで突き抜けてる!!

なんでこんなに落ちるの!?

ゆり | 無表情

営業利益の減り分 314.49億円 を分けてみたのです。

要因前期当期前年差
売上総利益1,175.38億円893.13億円△282.25億円
売上総利益率24.43%22.32%△2.11pt
販売費及び一般管理費1,035.34億円1,067.58億円+32.24億円
販管費率21.52%26.68%+5.16pt

やよい | 説明

見どころは下の行じゃ。

売上が 16.8% 減っておるのに、販管費のほうは減るどころか増えておる。

売れた量に応じて減る費用ではないものが、まるごと残ったということじゃ。

ようか | 泣きつく

そもそも、なんで売上がそんなに減ったの?

ゆり | 真剣

会社が理由として書いているのは、2025年10月19日に発生したランサムウェア攻撃なのです。

物流システムを中心に障害が起きて、WEBサイトでの注文受付を一時的に停止したと説明しています。

セグメント別ではeコマース事業が △791.47億円、ロジスティクス事業が △19.39億円 ですね。

やよい | 説明

減収の理由として会社が挙げておるのはこれ1本じゃ。

ただし、注文を止めていた間にどれだけ売り逃したかという金額は開示されておらぬ。

減った 809.02億円 のうち、どこまでが障害由来かまでは切り分けられぬということじゃ。

ゆり | 無表情

販管費が増えた理由も会社の言葉があるのです。

「売上高回復に向けた過去最大規模の販売促進施策の実施」と、

「一時的に物流効率が低下したこと」と書いています。

ただ、その実額は開示されていないのです。

やよい | 説明

売上を戻すための費用を先に使い、同時に現場の効率が落ちた。

その両方が減収と重なったのが当期じゃな。

数字で追える形にはなっておらぬゆえ、ここは会社の説明を受け取るところまでじゃ。

ようか | キョトン

純利益のほうが、営業利益よりもっと下に行ってるのはなんで?

ゆり | 無表情

営業利益より下で起きたことをまとめたのです。

区分前期当期前年差
特別損失2.14億円108.02億円+105.88億円
うち システム障害対応費用該当なし51.08億円+51.08億円
うち 減損損失0.83億円48.23億円+47.40億円
うち 固定資産除却損0.65億円7.80億円+7.15億円
法人税等合計41.79億円△79.46億円△121.25億円

やよい | 説明

特別損失の柱は2つじゃ。

システムの作り直しやセキュリティ強化にかかった復旧費用が 51.08億円

もう1つの減損 48.23億円 は、会社が「株式会社AP67に係るのれんおよび顧客関連資産」と名指ししておる。

ようか | キョトン

エーピーろくじゅうなな?

ゆり | 無表情

2023年2月に株式の85%を取得して子会社にした会社なのです。

フィード株式会社の親会社ですね。

買収には 87.85億円 使っています。

やよい | 説明

買ったときに乗せたのれんと顧客関連資産を、当期に切り下げたということじゃ。

ゆり | 無表情

残高の動きも並べてみたのです。

項目前期当期
のれん47.83億円7.22億円
顧客関連資産70.20億円51.99億円

ようか | 驚き

のれんのほう、ほとんど無くなってる!

やよい | 説明

会社は減損の内訳金額までは書いておらぬ。

どちらがいくらかは、残高の動きから推し量るしかないがのぅ。

ゆり | 微笑み

税金のほうは逆向きで、負担から益へ反転しているのです。

項目前期当期
法人税等合計41.79億円△79.46億円
繰延税金資産45.66億円129.94億円

ようか | キョトン

税金がマイナスになるなんてこと、あるの!?

やよい | 説明

税務上の欠損などに対して、将来取り戻せると判断した分が資産に乗った形じゃな。

ただし会社の判断根拠は開示されておらぬゆえ、わらわの読み筋にすぎぬ。

これが無ければ最終赤字はもっと大きかった。

現金とネットキャッシュ:冒頭の332億円の正体

ようか | 泣きつく

そんなに赤字なら、もう現金スッカラカンなんじゃないの!?

やよい | あきれ顔

慌てるでない。

赤字と手元の現金は別々に動く。

表を見るのじゃ。

項目前期比較前期当期
現金及び預金484.23億円493.32億円
現金及び預金の対資産率21.26%21.46%
有利子負債362.39億円703.53億円
ネットキャッシュ121.84億円△210.21億円
ネットキャッシュ比率8.6%△18.2%

ようか | 驚き

あれ!? 現金は増えてる!

なのに一番下がマイナスに落ちてる!

やよい | 説明

そこがこの期の肝じゃ。

現金の残高はほぼ動いておらぬが、その現金の出どころが変わった。

借りた金で埋めたゆえ、差し引きは 332.05億円 も悪くなっておる。

ゆり | 無表情

有利子負債の中身なのです。

項目前期当期前年差
短期借入金3.80億円272.80億円+269.00億円
リース債務(流動+固定)160.28億円253.39億円+93.11億円
1年内返済予定の長期借入金60.96億円43.74億円△17.22億円
長期借入金137.35億円133.60億円△3.75億円

ようか | 驚き

一番上、桁がおかしくなってる!

やよい | 説明

当座貸越という枠を使って引き出した分じゃ。

会社はこの枠の上限を 219.00億円 → 744.00億円 へ広げておる。

まだ使っていない残りが 484.00億円 ある。

資金の余地を先に確保してから復旧に入った、という順序じゃな。

ゆり | 無表情

営業外費用も増えているのです。

支払利息が 3.93億円 → 7.14億円 ですね。

当期から休止固定資産減価償却費 12.69億円 も新しく載っています。

やよい | 説明

前者は借入を増やした分がそのまま出ておる。

後者は、動かすのを止めた資産の減価償却とみるのが自然じゃが、会社の紐づけ説明は見当たらぬ。

ここはわらわの読み筋にとどめておく。

ゆり | 真剣

1年内に返す額の重さも変わっているのです。

短期返済額を現金及び預金で割った割合が 20.35% → 73.13% なのです。

5期で最も重いのです。

やよい | 説明

自己資本比率も 34.2% → 20.8% へ下がっておる。

通販と物流は在庫と仕入代金の回転で回す商売ゆえ、もともと借入がゼロで済む業種ではない。

とはいえ1年で借入が倍近くになったのは、5期の中では明らかに異質じゃ。

フリーCF:稼ぐ側が止まった年

ようか | キョトン

フリーCFって、なんだっけ?

やよい | 説明

本業で稼いだ現金から、投資で出ていった現金を引いた残りじゃ。

会社が自由に使える分と思えばよい。

まずは表じゃ。

項目前期比較前期当期
営業CF129.08億円△108.02億円
投資CF△165.79億円△142.16億円
フリーCF△36.71億円△250.18億円

ようか | 驚き

真ん中はちょっとマシになってるのに、上と下がひどい!

ゆり | 無表情

営業CFが反転した要因を、悪化した側と押し戻した側に分けてみたのです。

向き項目金額
主因税引前損益の悪化(136.18億円 → △297.90億円)434.08億円
悪化前期にあった損害賠償金の受取額が当期は無し118.81億円
悪化システム障害対応費用の支払額が新たに発生27.60億円
悪化未収消費税等の増加25.96億円
改善売上債権が売上減で回収超(前年差では112.92億円の改善)53.55億円
改善法人税等の支払額の減少(117.62億円 → 11.95億円)105.67億円
改善現金の出ない減損・システム障害対応費用の足し戻し48.23億円/51.08億円

ようか | 驚き

一番上の悪化、大きすぎない!?

やよい | 説明

つまり営業CFのマイナスは、赤字そのものが素直に出た結果じゃ。

そこへ前期の一時的な入金が消えたぶんが重なった。

売上債権の回収と税金の軽さが押し戻したが、埋めきれなかったということじゃな。

ようか | キョトン

投資のほうがマシになったのは、投資をやめたから?

やよい | 説明

そうではない。

新しい物流センターが完成して、工事中の分を示す建設仮勘定が 114.35億円 → 2.90億円 へ落ちただけじゃ。

それでも投資には 142.16億円 出しておる。

減収の年でも手を大きく緩めてはおらぬ。

ゆり | 無表情

流出した 250.18億円 をどう埋めたかも見ておきたいのです。

項目前期当期前年差
短期借入金の純増減額該当なし+269.00億円+269.00億円
セール・アンド・リースバックによる収入8.86億円130.43億円+121.57億円
自己株式の取得による支出△62.19億円△64.45億円△2.26億円
配当金の支払額△35.44億円△17.76億円+17.68億円
財務CF△96.49億円+252.21億円+348.70億円

ようか | 驚き

赤字なのに自己株式は買ってる!?

ゆり | 真剣

取得の決議は2025年3月18日で、2025年8月13日に終わっているのです。

ランサムウェア攻撃が起きたのは2025年10月19日なのです。

やよい | 説明

順番としては、被害が出る前に買い終えておったということじゃ。

ようか | キョトン

セール・アンド・リースバックって、なに?

全然わからん!

やよい | 説明

持っていた資産を売って代金を受け取り、そのまま借りて使い続ける取り決めじゃ。

当期はこれで 130.43億円 が入っておる。

同じ期に、リースの資産と債務が 132.42億円 新しく立っておるな。

ゆり | 無表情

物流センターを売って資金に換えた、ということでしょうか?

やよい | 説明

そう見るのが自然じゃが、会社は資産名を書いておらぬゆえ、推し量った話じゃ。

ともあれ現金の水準は保てたが、その中身は借入とリースに置き換わった。

そういう決算ということじゃな。

4. 当期の注目ポイント: 数字の焦点

ようか | 泣きつく

ゆり姉ぇ~わたしにも分かるようにポイントまとめて~😢

ゆり | 微笑み

まとめてみました


▶ 売上高は前期比 △16.8%(4,811.01 → 4,001.99億円)で、5期で初めての減収なのです。会社が挙げている理由は2025年10月19日のランサムウェア攻撃によるシステム障害なのです。

▶ 営業利益は 140.04億円 → △174.45億円、営業利益率は 2.91% → △4.36% なのです。減益 314.49億円 の内訳は、売上総利益の △282.25億円 と販管費の +32.24億円 なのです。

▶ 純利益は 90.68億円 → △221.50億円 なのです。特別損失が 2.14億円 → 108.02億円 へ増え、システム障害対応費用 51.08億円 と減損損失 48.23億円 が柱なのです。

▶ 手元資金(現金及び預金)は +1.9%(484.23 → 493.32億円)でほぼ横ばいなのです。対資産率も 21.26% → 21.46% なのです。

▶ フリーCFは △36.71億円 → △250.18億円 なのです。主因は営業CFが 129.08億円 → △108.02億円 へ反転したことなのです。

▶ ネットキャッシュは 121.84億円 → △210.21億円332.05億円 の悪化なのです。時価総額に対する比率も 8.6% → △18.2% なのです。有利子負債側の主因は短期借入金の +269.00億円 なのです。

▶ 収益はeコマース中心のフロー型なのです。1株当たり年間配当は 38円 → 10円 で、中間は無配なのです。


5. 5年推移の財務諸表まとめ: 伸びた4期と当期の反転

ようか | 笑顔

前期との違いは分かったけど、ちょっと長いスパンで見るとどうなんだ!?

やよい | 自信あり

うむ、まずは稼ぐ力を見て行こう。


項目2022/5期2023/5期2024/5期2025/5期2026/5期
売上高4,2854,4674,7174,8114,002
当期純利益929819191△222
営業利益143146170140△174
営業利益率3.34%3.27%3.59%2.91%△4.36%

やよい | 説明

ようか、ここから何を見る?

ようか | 驚き

売上の棒がちょっとずつ伸びてたのに、最後だけガクッと短くなってる!

あと真ん中あたり、利益だけ1本だけ飛び出てるのがある!

やよい | 説明

よく見ておるな。

まず売上は4期で 525.84億円 積み上げておる。

一番伸びたのが2024年5月期で、これは先ほど話に出たAP67を買って通期で数字に乗った年じゃ。

ゆり | 無表情

飛び出ている利益についても押さえておきたいのです。

2024年5月期の純利益 191.39億円 のうち、118.62億円 は特別利益の受取損害賠償金なのです。

会社も「受取損害賠償金の計上によるもの」と注記で書いています。

ようか | キョトン

じゃあ本業がめちゃくちゃ好調だったわけじゃないんだ?

やよい | 説明

そういうことじゃ。

その分を外せば、他の年と大差ない水準になる。

しかもこの賠償金が実際に入金されたのは翌2025年5月期じゃ。

同じ期に法人税を 117.62億円 払っておるゆえ、利益が乗った年と現金が動いた年がずれておるのじゃ。

ゆり | 悲しい

営業利益率のほうは、もっと静かな動きなのです。

3.34% → 3.27% → 3.59% → 2.91% と3%前後で来て、当期だけ △4.36% なのです。

やよい | 説明

つまりこの会社は、もともと粗利の薄い商売を量でこなしておる。

そこへ販管費が丸ごと残る形で売上が 16.8% 落ちれば、利益率は一気に沈むのじゃ。

ようか | キョトン

じゃあ売上さえ戻れば、利益率も勝手に戻るってこと?

ゆり | 無表情

そうならなかった期もあるのです。

2025年5月期は売上が 94.19億円 増えたのに、営業利益は 29.49億円 減っています。

販管費だけが 29.85億円 増えているのです。

やよい | 説明

売上が増えても利益が減る年はあるということじゃ。

ただしこの年の増収減益について、会社の説明は見当たらぬ。

さて、次にキャッシュの流れを追っていくぞ。


項目2022/5期2023/5期2024/5期2025/5期2026/5期
現金及び預金588662617484493
現金及び預金の対資産率31.27%29.11%25.40%21.26%21.46%
ネットキャッシュ336254256122△210
ネットキャッシュ比率19.6%13.1%12.4%8.6%△18.2%
フリーCF72△2854△37△250

ようか | 驚き

左の棒、上と下を行ったり来たりしてる!

右のほうは細っていって、最後に下へ突き抜けた!

やよい | 説明

そのとおりの読み方じゃ。

フリーCFは5期のうち3期がマイナスじゃ。

ネットキャッシュのほうは 336億円 から △210億円 まで削られ、当期に反対側へ抜けた。

ゆり | 無表情

2023年5月期と2025年5月期のマイナスは、当期と同じ理由ですか?

やよい | 説明

そういう理解の仕方もあるが、本質的には別物じゃ。

2023年5月期はAP67の買収 87.85億円 に設備とソフトウエアの取得が重なって、投資が 229.29億円 に膨らんだ年じゃ。

2025年5月期は物流センター建設で有形固定資産の取得が 92.81億円 まで増えた年。

どちらも本業では現金を稼いだうえで、投資が上回っただけじゃ。

ようか | キョトン

じゃあ今回は?

やよい | 説明

当期は本業のほうが 108.02億円 の持ち出しになっておる。

投資はむしろ前期より軽い。

稼ぐ側が止まった年という点で、前の2回とは形が違うのじゃ。

ゆり | 悲しい

現金及び預金そのものも、この5年で減り続けているのです。

項目2022/5期2026/5期
現金及び預金588億円493億円
現金及び預金の対資産率31.27%21.46%

ようか | 悲しい

じわじわ減ってたんだね…

やよい | 説明

現金は5期で 95億円 減り、借入のほうはこの1年で一気に増えた。

その差が開いた結果が、当期のネットキャッシュのマイナスというわけじゃ。

利払いをその年の稼ぎで賄えるかを見るEBITDA/利息も、79.71倍 から当期はマイナスになっておる。

ゆり | 微笑み

さらに詳細に知りたい人向けに、財務諸表をまとめたので、必要な方は以下を見るといいのです。

▼ 財務諸表を見る

ゆり

詳細に知りたい人向けに、財務諸表まとめたのです。

▼ BS(貸借対照表)

項目2022/5期2023/5期2024/5期2025/5期2026/5期
現金及び預金588662617484493
流動資産1,3701,5601,6801,4981,500
有形固定資産243279325340350
総資産1,8802,2752,4312,2782,299
流動負債1,0071,2051,2091,0701,318
固定負債301401408396467
純資産573669813813515
自己資本比率30.2%28.2%32.2%34.2%20.8%

▼ PL(損益計算書)

項目2022/5期2023/5期2024/5期2025/5期2026/5期
売上高4,2854,4674,7174,8114,002
売上原価3,2343,3973,5423,6363,109
売上総利益1,0511,0701,1751,175893
営業利益143146170140△174
親会社帰属純利益929819191△222

▼ CF(キャッシュ・フロー計算書)

項目2022/5期2023/5期2024/5期2025/5期2026/5期
営業CF180201169129△108
投資CF△107△229△115△166△142
財務CF△147102△98△96252
フリーCF72△2854△37△250
現金増減△7574△45△1332

(連結・日本基準、単位は億円。自己資本比率は会社開示値です。金額は億円に丸めているため、合計欄と内訳の単純合算に丸め差が生じる場合があります。現金及び預金は貸借対照表の残高で、キャッシュ・フロー計算書の現金及び現金同等物とは当期に7.08億円の差があります)

6. 指標まとめ: 来期に答えが出る問い

やよい | 自信あり

ここまでを大まかにまとめよう。

…と言いたいところじゃが、ようか、最後にまとめるのじゃ。

ようか | 自信あり

任された!

売上は4年ずっと伸びてたし、翌年には元の水準まで戻す計画を会社が出してるんだよな!

現金も減らさずに持ちこたえたし、配当もゼロにはしなかった!

守りの柱を1本増やしたって話だったし、そこがちゃんと効くのか注目だな!

やよい | 説明

よい締めじゃ。

その注目のしどころを、もう少し細かく分けておこう。

  • 売上は本当に翌期へ戻るのか? → 会社は2027年5月期に 4,900億円 と置いておる。当期は 4,001.99億円 じゃから、約900億円の戻しが要る。
  • 販管費は売上と一緒に戻るのか? → 販管費率は 21.52% → 26.68% じゃ。売上が戻っても、ここが張り付いたままなら利益率は戻らぬ。2025年5月期に増収減益になった前例もある。
  • 短期借入金 272.80億円 はどう返すのか? → 当座貸越の枠に未使用の 484.00億円 が残っておる。返済に回すのか、枠として持ち続けるのかで財務の姿が変わる。
  • 総還元性向45%の方針は維持されるのか? → 当期は最終赤字でも配当 17.76億円 と自己株式取得 64.45億円 を出した。翌期に利益が戻らぬ場合、方針と現実のどちらを動かすのかが見どころじゃ。

ゆり | 微笑み

さらなる分析用は下を開いて見るのです。

分析用データを見る

指標まとめ(2026年5月期)

やよい: 単純な数値では測れぬが、バリュエーション指標としてはPEREBITDAROICあたりを、財務健全性は流動比率EBITDA/利息あたりを、株主還元余地は現金比率ネットキャッシュ比率を指標として見るとよいぞ。

指標算出値見方
PER算出不可当期純損失のため計算できない。参考株価1,272円を各期の株式数に当てはめた仮定値では、2025年5月期13.29倍、2024年5月期6.48倍
現金比率37.43%現金及び預金493.32億円 ÷ 流動負債1,317.96億円。5期で58.39%から低下し続けている
流動比率113.81%流動資産1,500.05億円 ÷ 流動負債1,317.96億円。5期で最も低い。短期借入金が流動負債に入ったため
ネットキャッシュ△210.21億円現金及び預金493.32億円 − 有利子負債703.53億円。有価証券は抽出した財務データに該当科目の行が5期とも無いため0円として計算
ネットキャッシュ比率△18.41%ネットキャッシュ ÷ 時価総額1,141.89億円(記事作成時点の参考株価ベース)。投資有価証券4.87億円まで含めた参考値では△18.11%
EBITDA△108.45億円営業利益△174.45億円 + 減価償却費66.00億円。ソフトウエア償却費59.99億円は含めていない。2024年5月期の214.68億円が5期のピーク
EBITDA/自己資本△22.69%EBITDA ÷ 自己資本478.05億円。5期で31.74%から低下し当期は反転
EBITDA/利息△15.19倍EBITDA ÷ 支払利息7.14億円。前期は47.93倍。その期のEBITDAで利払いを賄えない状態
ROIC△13.81%営業利益×0.7 ÷(自己資本+短期借入金+長期借入金)。5期で14.89%から低下し当期は反転
PBR(参考)2.38倍参考株価1,272円 ÷ 1株当たり純資産533.94円

リスク

ようか: 有報からの抜粋だぜ!

  • 顕在化したリスク(当期に新設された節)/ランサムウェア攻撃によるシステム障害: 2025年10月19日に発生。物流システムを中心とした障害で出荷機能が一時制限され、保有する情報の一部の外部流出も確認。関係当局への報告、外部専門機関による調査、対象者への個別連絡を実施。会社は「復旧費用等、ならびに出荷停止期間中の機会損失が発生し、これらは当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼしております」と記載。実額として特定できるのは特別損失のシステム障害対応費用51.08億円と、うち当期支払済みの27.60億円のみ。
  • 対応策: NIST SP800シリーズ/NIST CSF等のグローバル標準に基づくセキュリティ評価、2026年3月21日からのCISO設置、CEO直下の「トラスト&セキュリティ」組織新設。
  • 特に重要/ビジネスモデルの変革の遅れ・事業再編への対応不全: eコマース市場の構造変化への対応が遅れるリスク。
  • 特に重要/サイバー攻撃によるシステム障害、大規模システム開発の遅延等、その他情報漏洩: 前期までより高い位置づけへ変更。大規模システム開発・設備投資の実施と実施後の減損に関するリスク、従業員等による情報漏洩リスクを含む。
  • 特に重要/事業継続・サプライチェーンの分断: 災害や物流網の寸断による事業停止。
  • 特に重要/AIの進化に伴う事業・社会変化への対応不全: 当期に明確な節として新設。生成AIによる市場変化は成長機会としても位置づけ。
  • 特に重要/グローバルな情勢・経済環境の変化、社会的課題への対応とESG・レピュテーション、法令違反と内部統制、人材の確保・育成。
  • その他/商品の安全性および品質水準、事業運営に関わる関連法規等による規制(消費者契約法、特定商取引法、景品表示法、薬機法、個人情報保護法等)。
  • その他/物流センターの出荷能力: 出荷能力が需要に追いつかないリスク。
  • その他/LINEヤフー株式会社との業務・資本提携契約: 議決権46.89%を保有する筆頭株主との関係が変化した場合の事業影響。

株主還元

ゆり: 株主還元だけを見ての投資はダメですが、長期で買う前提の場合は現在値を知っておきましょう。

項目数値補足
発行済株式総数89,771,300株提出日2026年7月30日現在も同数。5期で97,518,800株から7.9%減少
自己株式数237,728株自己保有割合0.26%。前期は1,245,700株・1.31%。うち32,728株は譲渡制限付株式報酬制度における無償取得および単元未満株式の買取り
1株当たり年間配当10円中間配当は無配、期末10円のみ。前期38円から28円の減配予定。5期の推移は31円→34円→36円→38円→10円で、34円には30周年記念配当2円を含む
配当利回り0.79%参考株価1,272円ベース
連結配当性向算出不可当期純損失のため。会社も「1株当たり当期純損失であるため記載しておりません」としている
配当方針総還元性向45%安定的な株主配当と計画的な自己株式取得を組み合わせる方針。年2回配当が基本。当期の期末配当は2027年5月期の業績回復見通しを勘案して実施すると説明
配当金の総額8.95億円会社開示の895百万円と一致。前期は35.54億円
自己株式取得64.45億円2025年3月18日の取締役会決議(上限500万株・80億円、取得期間2025年3月19日〜9月30日)に基づき2025年8月13日に終了。ランサムウェア攻撃の発生より前に完了
自己株式の消却5,000,000株2025年10月20日に実施。発行済株式総数は94,771,300株から89,771,300株へ
株主還元総額82.21億円配当17.76億円+自己株式取得64.45億円。当期は最終赤字だが還元は継続。5期の合計は375.76億円
ストック型収益に対する配当該当なしeコマース中心のフロー型。フロー型と判定したセグメント売上高3,950.65億円に対する配当総額8.95億円は0.23%。営業利益比は当期が赤字のため算出不可
株主優待2,000円分クーポン毎年5月20日および11月20日現在の100株以上保有者へ「LOHACO」500円割引クーポン4枚
大株主上位10名で70.25%LINEヤフー46.89%、プラス11.54%、日本マスタートラスト信託銀行(信託口)4.26%。自己株式を除く発行済株式総数に対する割合
期末配当の確定未確定期末配当10円は2026年8月6日開催予定の定時株主総会の決議事項

7. 補足: データの読み方と注意点

参考株価は本記事を作成した時点の値(1,272円、2026-08-03 終値)を使用しています。時価総額・配当利回り・指標まとめのネットキャッシュ比率・PBRはこの参考株価を前提とした参考値で、時価総額の計算では自己株式を控除していません。有価証券報告書の提出日は2026年7月30日で、株価の基準日と4日ずれています。

5年推移表のネットキャッシュ比率は、各期の有価証券報告書提出日の終値と当時の発行済株式総数から算出した各期の時価総額に基づく参考値です。指標まとめの△18.41%は記事作成時点の参考株価基準のため、算出基準が異なり値がずれています。

ネットキャッシュは現金及び預金から有利子負債(短期借入金、リース債務の流動・固定、1年内返済予定の長期借入金、長期借入金の合計)を差し引いた値です。有価証券は抽出した財務データに該当科目の行が5期とも無いため0円として扱っています。投資有価証券は別の科目として存在しますが、基本の計算式には含めていません。

貸借対照表の現金及び預金493.32億円と、キャッシュ・フロー計算書の現金及び現金同等物486.24億円には7.08億円の差があります。当期に預け入れた3か月超の定期預金7.00億円が主因とみられますが、会社の説明はないため推し量った内容です。

有価証券報告書の抽出データに経営成績・キャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)本文が5期とも含まれていないため、営業CFやネットキャッシュの変動要因はキャッシュ・フローと損益の明細から推し量った推定を含みます。会社が開示している説明と推定は本文中で区別して記載しました。具体的には、減損損失48.23億円ののれん・顧客関連資産の内訳、繰延税金資産84.28億円増の根拠、セール・アンド・リースバック130.43億円の対象資産、休止固定資産減価償却費12.69億円の対象資産が推定にあたります。

ランサムウェア攻撃による機会損失(逸失売上)の実額は開示されていません。減収809.02億円のうちどこまでが障害由来かは特定できません。同様に、販売促進施策の実額と物流効率低下によるコスト増の実額も開示されていません。2024年5月期の受取損害賠償金118.62億円についても、相手方や事案の内容の説明は抽出データに含まれていません。

セグメント別の売上高と営業利益は取得できましたが、資産・設備投資額・減価償却費の内訳は取得していません。またロジスティクス事業のセグメント売上高は外部顧客向けのみが計上されており、グループ内向け物流受託の規模は分かりません。

期末配当10円は2026年8月6日開催予定の定時株主総会の決議事項であり、本記事作成時点では確定していません。配当利回り0.79%はこの予定額に基づく参考値です。

「収益認識に関する会計基準」は2022年5月期の期首から適用されています。本記事の対象5期はすべて適用後のため、5期内での売上高の連続性は保たれています。株式分割は2021年5月21日の1対2が直近で、対象5期の期首より前にあたるため、株価に関する指標の分割補正は行っていません。

財務諸表は EDINET のデータから自動取得しているため、正確性に欠ける可能性があります

本記事は EDINET 提出の有価証券報告書(第63期、2026年7月30日提出)をもとに作成した情報整理記事です。 特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。 投資判断はご自身の責任でお願いします。