決算分析

アサヒグループホールディングス株式会社
2025-12期 有報5年推移分析

公開日: 2026/08/04

稼ぎは4分の1、還元は過去最大 | 有価証券報告書 2025年12月期

参考株価と時価総額

項目
前提2026-08-03 時点の参考株価。提出日現在の発行済株式総数で算出
株価1,657.5円
発行済株式総数1,521,010,086株
時価総額25,210.7億円

稼ぎは4分の1、還元は過去最大 ―― アサヒグループ2025年12月期を読む

提出日:2026-07-27 / 会計期:2025年12月期

項目前期当期前期比
営業CF4,037.2億円1,048.2億円△74.0%
フリーCF2,850.6億円△956.5億円マイナス転落
株主還元総額1,073.6億円1,496.6億円+39.4%

ようか | 驚き

ちょっと待って!

本業で入ってくるお金が4分の1になってる!?


やよい | あきれ顔

騒ぐでない。

とはいえ、ここは騒いでよいところじゃな。


ようか | キョトン

え、いいんだ?


やよい | 説明

この会社は4年ずっと伸びてきておった。

それが当期、まとめて反対を向いたのじゃ。


ようか | 驚き

じゃあ配当とか減っちゃった感じ?


やよい | 自信あり

いや、株主に返した額は5年で一番多い。


ようか | 驚き

……入ってくるお金が減ってるのに、出すお金は増やしたの!?

そんなことできるの!!


やよい | 説明

できる。

どうやったのか、順に見ていくぞ。


目次

  • 会社概要: ビールを軸に3地域で稼ぐ持株会社
  • 収益構造: 既存ブランドと隣接カテゴリーへ投資
  • 前期からの変化: 5期で唯一の減収減益
  • 当期の注目ポイント: 減収減益とCFの反転
  • 5年推移の財務諸表まとめ: 伸びた4期と反転した1期
  • 指標まとめ: 稼ぐ力と財務の状態
  • 補足: データの読み方と注意点

1. 会社概要: ビールを軸に3地域で稼ぐ持株会社

ようか | 笑顔

アサヒグループホールディングスかぁ、ビール作ってる会社だっけー?

やよい姉!解説よろしく!!

やよい | 自信あり

うむ!わらわが解説してやるぞ。

おおよそ合っておるが、日本のビール会社という言い方だと半分も説明できておらぬ。

自分では作らず、世界の子会社をまとめて持っている会社じゃ。

その傘下に連結子会社196社、関連会社33社を抱えておる。

ようか | キョトン

196社!?

そんなにあるの?

やよい | 説明

多いのは海外を買って広げてきたからじゃ。

オーストラリアのSchweppes、日本のカルピス、

西欧と中東欧のビール事業、そしてオーストラリアのCUB。

いまは日本・東アジア、欧州、アジアパシフィックの3地域が稼ぎの柱じゃな。

ゆり | 無表情

まとめたのです。

区分内容
主力商品・サービスビールを中心とした酒類。日本のアサヒビール、ニッカウヰスキー、欧州のBirra Peroni、Kompania Piwowarska、オセアニアのCUB など
その他商品飲料(アサヒ飲料、カルピス)、食品(アサヒグループ食品)、乳製品(マレーシアのEtika Dairies)、研究開発・調達・スタートアップ投資ファンド
収益形態店頭・飲食店での都度購買が中心のフロー型。継続課金型の収益基盤は開示されていない
開示区分IFRS連結。日本・東アジア/欧州/アジアパシフィック/その他の4区分(当期から変更)

ようか | 驚き

日本の会社なのに、海外の会社がめちゃくちゃ並んでる!

やよい | 説明

そこがこの会社の形じゃ。

売上収益に占める日本の割合は 約44.7%

欧州とアジアパシフィックの合計が 約53.6% で、海外のほうが大きい。

ゆり | 無表情

当期は新しい動きもあるのです。

2025年12月に、Diageoの子会社が持つケニアの酒類会社2社について、

株式取得を決めて売買契約を結んでいるのです。

東アフリカ市場への進出ですね。

やよい | 自信あり

有利子負債を減らしていた数年は買収を抑えておった。

また外へ出る動きに戻ったということじゃな。

ゆり | 無表情

3つの地域で酒類と飲料を作って売る、その持株会社ということですね。

2. 収益構造: 高く売って、ビールの隣も取りにいく

ゆり | 無表情

収益に対する企業姿勢はどうなのでしょう?

やよい | 自信あり

うむ。よい指摘じゃ。

中長期経営方針は2本立てでの、1本目はビール既存事業の持続的成長じゃ。

『Asahi Super Dry』と『Peroni Nastro Azzurro』を世界ブランドと位置づけ、

値段の高い商品へ寄せて単価を上げる作戦じゃな。

ゆり | 微笑み

安く数を売るのではなく、高く売って粗利を守る、ということですね。

やよい | 説明

そのとおりじゃ。

2本目は、ビールの隣にある商品群を伸ばす話でな。

会社はここをBACと呼んで、投資を強めると書いておる。

ようか | キョトン

ビーエーシー?

全然わからん!

ゆり | 無表情

Beer Adjacent Categories の略なのです。

ノンアルコール飲料、缶チューハイなどのRTD、

大人向けの清涼飲料を指すと有報に説明があるのです。

やよい | 説明

酒を飲む量が減っても、その隣で売れるものを持っておこうという考えじゃな。

ようか | キョトン

でも、飲み物って作るのに工場がいるんだよね?

やよい | 説明

よいところに気づいたな。

酒も飲料も自前の設備で作る商売ゆえ、伸ばすには設備投資がついて回る。

重くなりすぎぬか、資本効率の目標へ届くのか、そこを見ていく必要がある。

3. 前期からの変化: 粗利は守れた、では何が削られたのか

売上と利益:減益の中心は本業の外側だった

ようか | 笑顔

やよい姉ぇ、去年と比べて売上と利益はどうだったの?

冒頭でも触れてたけど、どっちも減ったってやつだよな!

やよい | 説明

うむ、そのとおりじゃ。

ただ減り方が売上と利益で全く違っての。

まずは表で見るのじゃ。

項目前期比較前期当期
売上高(売上収益)29,394.2億円28,946.8億円
営業利益2,690.5億円1,858.7億円
営業利益率9.15%6.42%
親会社所有者帰属当期利益1,920.8億円1,215.7億円

ようか | 驚き

売上はちょっとしか減ってないのに、利益だけドンって落ちてる!!

なんで!?

ゆり | 無表情

営業利益の減り分 831.8億円 を、損益計算書の並びどおりに分けてみたのです。

要因前期当期前年差
売上総利益10,976.8億円10,928.4億円△48.4億円
販売費及び一般管理費△8,125.6億円△8,298.4億円△172.8億円
その他の営業収益252.0億円53.9億円△198.1億円
その他の営業費用△412.7億円△825.1億円△412.4億円
営業利益2,690.5億円1,858.7億円△831.8億円

やよい | 説明

見どころは、粗利がほとんど減っておらぬところじゃ。

売上総利益率はむしろ 37.34% から 37.75% へ上がっておる。

減益の中心は下の2行、商品を作って売る本業の外側にある損益なのじゃ。

ようか | キョトン

その他の営業なんとかって、なに?

やよい | 説明

固定資産を売った損益や、資産の価値を切り下げる減損など、

その年だけの出入りが入る場所じゃ。

アサヒが使うIFRSという会計基準では、それが営業利益の中に入る。

日本基準なら特別損益として、営業利益の下に置かれるものじゃな。

ゆり | 無表情

その他の営業費用の増加 412.4億円 のうち、

減損損失が 68.3億円 → 276.5億円208.2億円 を占めるのです。

前期には固定資産の売却益 154.0億円 がありましたが、

当期は同じものがないのです。

やよい | 説明

わらわの見立てでは、この売却益の剥落が収益減少のほとんどじゃ。

会社は内訳の実額を出しておらぬゆえ、推し量った話にはなるがの。

残る費用増のうち約 204億円 が何かは、開示からは追い切れぬ。

ようか | 泣きつく

利益が減った理由、会社はなんて言ってるの?

ゆり | 真剣

会社の説明はこうなのです。

「日本で発生したサイバー攻撃に伴うシステム障害の影響等により、

EPS及びROE、ROICはガイドラインを下回りました」

ただ、被害額や復旧費用の実額は開示されていないのです。

やよい | 説明

つまり影響があったこと自体は会社が認めておる。

だが、いくら減ったかは書かれておらぬゆえ断定できぬ。

売上が 447.5億円 減ったほうも同じでの、

どの地域や商品でどれだけ落ちたかは開示されておらぬ。

ゆり | 無表情

純利益は営業利益より減り方が大きいのです。

営業利益の △30.9% に対して、純利益は △36.7% なのです。

やよい | 説明

理由は2つじゃ。表で見るのが早い。

項目前期当期
金融費用207.9億円285.2億円
実効税率27.6%31.5%

ようか | キョトン

利益が減ったんだから、税金は安くなるんじゃないの?

やよい | 説明

税額そのものは減っておるぞ。

ただ、利益の減り方に追いついておらぬのじゃ。

現金とネットキャッシュ:手元は増えたのに、差は開いた

ようか | 笑顔

利益がそんなに減ったなら、現金もスッカラカンになってるんじゃない!?

やよい | あきれ顔

慌てるでない。

利益とキャッシュは別の話じゃ。

表を見るのじゃ。

項目前期比較前期当期
現金及び現金同等物839.6億円1,563.8億円
現金及び現金同等物の対資産率1.55%2.59%
有利子負債12,791.8億円16,441.8億円
ネットキャッシュ△11,952.2億円△14,878.0億円
ネットキャッシュ比率△40.0%△58.4%

ようか | 驚き

あれ!? 現金は増えてる!

でも下の2つ、マイナスばっかりだ!

やよい | 説明

そこがこの会社の形じゃ。

現金は 724.2億円 増えたが、借入と社債の合計はそれ以上に増えた。

差し引きのネットキャッシュは 2,925.9億円 も悪化しておる。

ゆり | 無表情

有利子負債の内訳を見ると、動いたのは短期のほうなのです。

項目前期当期
社債及び借入金(流動)4,511.3億円8,387.9億円
社債及び借入金(非流動)8,280.5億円8,053.9億円

やよい | 説明

長い社債を返して、短い借入へ置き換えた形じゃな。

キャッシュ・フローでも社債の償還に 4,147.0億円 を使い、

短期借入金は +6,608.5億円 の純増になっておる。

ようか | キョトン

なんでそんなに借りたの?

やよい | 説明

会社は理由を書いておらぬ。

社債の借換え、手元資金の確保、東アフリカの買収を含む投資への備え。

そのどれか、あるいは全部というのがわらわの見立てじゃ。

ようか | キョトン

そもそも、なんでこんなに借金があるの?

やよい | 説明

2020年のCUB買収じゃ。

オーストラリアのビール事業を160億豪ドルで買っての、

そのときの借入がまだ残っておる。

その後の3期はきちんと減らしてきたが、当期に反転したという流れじゃ。

ゆり | 真剣

会社が使っているNet Debt/EBITDAという指標も 2.49倍 → 3.70倍 なのです。

会社が掲げるガイドラインは 2.5〜3倍程度 で、当期は超えているのです。

理由は「システム障害の影響などに伴うEBITDAの減少」と説明されています。

やよい | 説明

借金が増えた側と、稼ぎが減った側の両方から悪化した数字じゃな。

ただ、酒類は元々設備と買収で成り立つ商売での、借入自体は異常ではない。

問題は水準が、自分の決めた範囲を出たことのほうじゃ。

フリーCF:冒頭の「4分の1」の中身

ようか | キョトン

フリーCFって、なんだっけ?

やよい | 説明

本業で稼いだ現金から、投資で出ていった現金を引いた残りじゃ。

会社が自由に使える分と思えばよい。

冒頭で数字だけ見せたやつを、ここで中身まで開けるぞ。

項目前期比較前期当期
営業CF4,037.2億円1,048.2億円
投資CF△1,186.7億円△2,004.7億円
フリーCF2,850.6億円△956.5億円

ようか | 驚き

営業CFが4分の1になってる!!

フリーCFもマイナス!?

ゆり | 無表情

営業CFの減り分 2,989.1億円 のうち、大きい要因を3つ並べたのです。

要因前期当期前年差
税引前利益2,669.9億円1,792.8億円△877.1億円
営業債権の増減額+390.7億円△439.5億円△830.2億円
その他負債の増減額+51.6億円△758.7億円△810.3億円

やよい | 説明

この3つの合計が △2,517.6億円

営業CF減少の84%は、この表で説明がつくのじゃ。

ようか | キョトン

えいぎょうさいけん?

なんか難しいのが出てきた!

やよい | 説明

売った代金のうち、まだ受け取っておらぬ分のことじゃ。

これが増えたということは、代金の回収が遅れたということ。

払うべき負債のほうは減った、つまり支払いは先に出ていった。

どちらも現金を外へ押し出す動きじゃな。

ようか | キョトン

回収が遅れたのって、なんで?

やよい | 説明

システム障害で受注や請求の流れが乱れた影響とみるのが自然じゃな。

ただ、会社はその因果を書いておらぬゆえ、これはわらわの推定にすぎぬ。

その他負債 758.7億円 の減少に至っては、内訳が開示に無いのじゃ。

ゆり | 無表情

残りの要因も、押し下げと押し戻しに分けてまとめたのです。

向き項目前年差
押し下げ営業債務の増減額△365.7億円
押し下げ棚卸資産の増減額△194.0億円
押し下げ法人所得税の支払額△192.1億円
押し下げ利息の支払額△59.4億円
押し戻し減損損失+208.2億円
押し戻し固定資産除売却損益+194.8億円
押し戻し減価償却費+51.6億円

ようか | キョトン

押し戻しって、いいことなの?

やよい | 説明

減損などは費用としては増えたが、現金が出ていくわけではない。

じゃからCFの計算では足し戻される、それだけの話じゃ。

ゆり | 無表情

投資の側も出費が増えているのです。

項目前期当期前年差
有形固定資産の売却収入328.8億円41.4億円△287.4億円
子会社株式等の取得支出214.5億円455.2億円△240.7億円

やよい | 説明

資産を売って得る収入が減り、会社を買う支出が増えたわけじゃな。

ゆり | 無表情

設備投資も増えているのです。

有報開示ベースで 1,616.9億円 → 1,744.8億円 なのです。

地域設備投資主な内容
日本・東アジア743.4億円基幹システムの再構築
欧州570.7億円工場の貯酒設備の再編
アジアパシフィック385.3億円老朽化した設備の更新

やよい | 説明

減価償却費は 1,630.9億円 じゃから、当期は設備投資が上回った。

作る設備を自前で持つ商売は、売上を保つだけでも投資がついて回る。

投資をせずに伸びる収益源は、見当たらぬな。

ゆり | 真剣

その状況で、株主還元は5期で最大なのです。

項目金額
配当796.5億円
自己株式取得700.1億円
株主還元総額1,496.6億円
フリーCF△956.5億円
差引の不足△2,453.1億円

ようか | 驚き

出た!

冒頭で言ってたやつ!

やよい | 説明

うむ、これが答えじゃ。

不足分を短期借入で埋めた、という順序じゃな。

会社は累進配当と機動的な自己株式取得を約束しておるゆえ、

1年の悪化では還元を落とさぬ設計になっておる。

ようか | キョトン

じゃあ、借金が増えたのは…

やよい | 説明

方針とセットの結果、ということじゃな。

4. 当期の注目ポイント: 減収減益とCFの反転

ようか | 泣きつく

ゆり姉ぇ~わたしにも分かるようにポイントまとめて~😢

ゆり | 微笑み

まとめてみました


▶ 売上収益は前期比 △1.5%(29,394.2 → 28,946.8億円)で、5期で初めての減収なのです。

▶ 営業利益は △30.9%(2,690.5 → 1,858.7億円)、営業利益率は 9.15% → 6.42% なのです。減益の中心は売上総利益ではなく、販管費 +172.8億円 とその他の営業損益 △610.5億円 なのです。

▶ 純利益は △36.7%(1,920.8 → 1,215.7億円)なのです。金融費用の増加と、実効税率が 27.6% → 31.5% へ上がったことが重なったのです。

▶ 手元資金(現金及び現金同等物)は +86.3%(839.6 → 1,563.8億円)なのです。ただし総資産に占める割合は 2.59% で、薄い水準なのです。

▶ フリーCFは 2,850.6億円 → △956.5億円 で、5期で初めてマイナスなのです。主因は税引前利益 △877.1億円、その他負債 △810.3億円、営業債権 △830.2億円 の3つなのです。

▶ 有利子負債は +28.5%(12,791.8 → 16,441.8億円)なのです。短期借入金の純増 +6,608.5億円 が中心で、会社開示のNet Debt/EBITDAは 2.49倍 → 3.70倍 なのです。

▶ 収益はフロー型で、ネットキャッシュは △14,878.0億円 なのです。ネットキャッシュ比率が1を超える会社ではないのです。


5. 5年推移の財務諸表まとめ: 伸びた4期と反転した1期

ようか | 笑顔

前期との違いは分かったけど、ちょっと長いスパンで見るとどうなんだ!?

やよい | 自信あり

うむ、まずは稼ぐ力を見て行こう。


項目2021/12期2022/12期2023/12期2024/12期2025/12期
売上高22,36125,11127,69129,39428,947
当期純利益1,5351,5161,6411,9211,216
営業利益2,1192,1712,4502,6911,859
営業利益率9.48%8.64%8.85%9.15%6.42%

やよい | 説明

ようか、ここから何を見る?

ようか | 驚き

売上の棒はずっと伸びてたのに、最後だけ止まってる!

下の利益の線も、最後だけストンと落ちてる!

やよい | 説明

よく見ておるな。

売上収益は4期で 22,360.8億円 から 29,394.2億円 へ、

年率およそ 9.5% で伸びてきた。

そこから当期、28,946.8億円 へ反転じゃ。

ゆり | 無表情

伸びた4期の中身も見ておきたいのです。

売上総利益率は 38.14% → 36.71% → 36.08% → 37.34% → 37.75% なのです。

真ん中の2期は下がって、直近の2期は戻しています。

ようか | キョトン

じゃあ売れる量がめちゃくちゃ増えたってこと?

やよい | 説明

そこは半分じゃな。

会社は主力ブランドを高い価格帯へ寄せ、販売単価が上がったと書いておる。

加えて海外の売上が5割を超えるゆえ、円安なら円に直した金額が膨らむ。

実際の販売量がどれだけ動いたかまでは、開示からは追い切れぬ。

ゆり | 悲しい

利益の下がり方は当期に集中しているのです。

減損損失は 134.4 → 184.9 → 21.8 → 68.3 → 276.5億円 で、

当期が5期で最大なのです。

やよい | 説明

のれんと無形資産が総資産の 60.7% を占める会社じゃからの。

そこが切り下がると、営業利益に直接効く。

会社もリスクとして、のれん 24,107億円 と無形資産 12,471億円 の規模を明記しておる。

さて、次はキャッシュの流れを追っていくぞ。


項目2021/12期2022/12期2023/12期2024/12期2025/12期
現金及び現金同等物5273746008401,564
現金及び現金同等物の対資産率1.16%0.78%1.13%1.55%2.59%
ネットキャッシュ△15,435△14,599△13,509△11,952△14,878
ネットキャッシュ比率△68.8%△58.9%△47.8%△40.0%△58.4%
フリーCF3,2351,9682,2982,851△957

ようか | 驚き

青い棒が最後だけ赤くなって下に伸びてる!

緑の棒も、せっかく短くなってきてたのにまた伸びちゃった!

やよい | 説明

そのとおりの読み方じゃ。

フリーCFは4期続けてプラスで、合計 1兆円 を超える現金を生んだ。

その積み上げで、ネットキャッシュのマイナス幅は

15,434.6億円 から 11,952.2億円 まで縮んでおったのじゃがな。

ようか | 悲しい

当期で一気に戻っちゃったんだ…

ゆり | 無表情

2022/12期にも営業CFが 3,378.1億円 → 2,659.9億円 へ落ちた期があるのです。

このときと当期は、同じ理由ですか?

やよい | 説明

似て見えるが、本質的には別物じゃ。

この年は会社の説明が残っておらぬゆえ、明細から読むしかないのじゃが。

ゆり | 無表情

2022/12期の明細を並べてみたのです。

項目2021/12期2022/12期
法人所得税の支払額506.1億円885.6億円
棚卸資産の増加145.7億円279.6億円

やよい | 説明

税金の支払い増と、原材料高で膨らんだ在庫じゃな。

支払いのずれと在庫の話ゆえ、翌期には戻っておる。

当期は利益そのものが減った上に、代金のめぐりまで悪くなった。

性質が違うのじゃ。

ようか | キョトン

現金は増えてるのに、なんでネットキャッシュはこんなにマイナスなの?

やよい | 説明

手元の現金が薄いからじゃ。

総資産に占める現金の割合は、5期を通じて 0.78% から 2.59% の範囲。

1兆円台の借入と並べれば、差は埋まらぬ。

1年内に返済や償還が来る額は当期 8,387.9億円 で、現金の5倍を超える。

ようか | 驚き

現金の5倍!?

やよい | 説明

借換えを回し続ける前提の資金運営、ということじゃな。

ゆり | 微笑み

さらに詳細に知りたい人向けに、財務諸表をまとめたのです。

必要な方は以下を開いてください。

▼ 財務諸表を見る

ゆり

詳細に知りたい人向けに、財務諸表まとめたのです。

▼ BS(貸借対照表)

項目2021/12期2022/12期2023/12期2024/12期2025/12期
現金及び現金同等物5273746008401,564
流動資産7,0027,3758,4708,57910,277
有形固定資産8,1848,3478,8819,35410,312
総資産45,47848,30352,85954,03460,284
流動負債12,42912,66013,97015,10318,019
固定負債(非流動負債)15,45715,01514,23212,19012,180
純資産(資本合計)17,59220,63024,65826,74130,085
自己資本比率38.6%42.7%46.5%49.4%49.8%

▼ PL(損益計算書)

項目2021/12期2022/12期2023/12期2024/12期2025/12期
売上高(売上収益)22,36125,11127,69129,39428,947
売上原価13,83215,89317,70218,41718,018
売上総利益8,5299,2189,98910,97710,928
営業利益2,1192,1712,4502,6911,859
親会社帰属純利益1,5351,5161,6411,9211,216

▼ CF(キャッシュ・フロー計算書)

項目2021/12期2022/12期2023/12期2024/12期2025/12期
営業CF3,3782,6603,4764,0371,048
投資CF△144△692△1,177△1,187△2,005
財務CF△3,203△2,196△2,268△2,7281,259
フリーCF3,2351,9682,2982,851△957
現金増減43△153231240724

(連結・IFRS、単位は億円。IFRSでは「収益(売上収益)」が日本基準の売上高、「資本合計」が純資産、「非流動負債」が固定負債にあたります。自己資本比率は親会社所有者帰属持分比率を指します。現金増減は為替変動影響を含む現金及び現金同等物の増減額です。有利子負債は社債及び借入金の合計で、リース負債は「その他の金融負債」に含まれるため除外しています)

6. 指標まとめ: 来期に答えが出る問い

やよい | 自信あり

ここまでを大まかにまとめよう。

…と言いたいところじゃが、ようか、最後にまとめるのじゃ。

ようか | 自信あり

任された!

売上はこの5年でだいぶ大きくなったし、会社の体力もずっと増えてきてる!

今年は利益が減ったけど、配当は増やしたままだったな!

ケニアの会社も仲間に入るみたいだし、稼ぐ力が戻るのか注目だな!

やよい | 説明

よい締めじゃ。

その注目のしどころを、もう少し細かく分けておこう。

  • 営業CFは元の水準へ戻るのか? → 当期の減少の大半は代金の回収と支払いのめぐりによるもので、翌期に戻る種類の動きも混ざっておる。戻らなければ、稼ぐ力そのものが落ちたということじゃ。
  • 借入で還元を続ける形は何年もつのか? → 当期は不足 2,453.1億円 を借入で埋めた。累進配当を掲げた以上、フリーCFが戻らなければ同じことを繰り返すことになる。
  • Net Debt/EBITDAはガイドラインの範囲へ戻るのか? → 会社自身が 2.5〜3倍程度 と決めた線を 3.70倍 で超えておる。分子と分母のどちらから直すのかが見どころじゃ。
  • のれん24,107億円は据え置けるのか? → 総資産の4割を占める。当期の減損 276.5億円 は5期で最大での、ここが動くと営業利益に直接効く。

ゆり | 微笑み

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指標まとめ(2025年12月期)

やよい: 単純な数値では測れぬが、バリュエーション指標としてはPEREBITDAROICあたりを、財務健全性は流動比率EBITDA/利息あたりを、株主還元余地は現金比率ネットキャッシュ比率を指標として見るとよいぞ。

指標算出値見方
PER20.74倍時価総額 25,210.74億円 ÷ 親会社所有者帰属当期利益 1,215.74億円。自己株式控除後では19.94倍。前期は13.13倍で、利益が縮んだ分だけ倍率が上がっている
現金比率2.59%現金及び現金同等物 1,563.80億円 ÷ 総資産 60,284.14億円。5期を通じて1〜2%台で、手元資金は薄い
流動比率57.04%流動資産 10,277.25億円 ÷ 流動負債 18,018.65億円。5期とも56〜61%で100%を下回る。1年内返済の社債及び借入金8,387.87億円が流動負債に入るため
ネットキャッシュ△14,877.97億円現金及び現金同等物 1,563.80億円 − 有利子負債 16,441.77億円。有価証券はIFRSの区分上、独立した科目が無いため0円として計算
ネットキャッシュ比率△59.01%ネットキャッシュ ÷ 時価総額(記事作成時点の参考株価ベース)。1を超える水準ではなく、ネット有利子負債側の会社
EBITDA3,489.57億円営業利益 1,858.70億円 + 減価償却費及び償却費 1,630.87億円。前期の4,269.9億円から減少
EBITDA/自己資本11.62%EBITDA ÷ 親会社所有者帰属持分 30,030.52億円。5期で19.73%から低下
EBITDA/利息12.23倍EBITDA ÷ 金融費用 285.22億円。5期で18.73倍から低下。キャッシュ・フロー上の支払利息216.17億円で計算すると16.14倍
ROIC2.80%営業利益×0.7 ÷(自己資本+社債及び借入金)。会社開示のROICは6.1%で、税引後事業利益と純有利子負債を使う別定義のため一致しない。会社目標は10%以上

リスク

ようか: 有報からの抜粋だぜ!

  • 全体/中長期経営方針: 2025年2月に更新した主要指標のガイドラインと財務方針が、各種要因により未達となる可能性。当期はEPS・ROE・ROICがガイドラインを下回った。
  • 全体/事業環境: 売上収益の約44.7%を占める日本で人口減少と少子高齢化が進む。日本の売上のうちビール類は4割超。海外は欧州とアジアパシフィックで約53.6%を占め、各国の景気や競争環境の変化が影響する。
  • ①中長期/事業拡大: M&Aで期待したシナジーが出ない可能性。のれん24,107億円(総資産の40.0%)と無形資産12,471億円(同20.7%)を計上しており、事業環境の悪化や割引率の変動で減損が発生し得る。
  • ①中長期/アルコール摂取に対する社会の価値観: 世界的に規制や社会的要請が強まると、需要縮小やブランド価値への影響が生じる可能性。
  • ①中長期/技術革新、気候変動、プラスチック使用: 新しいビジネスモデルへの対応遅れ、原材料調達への気候影響、容器包装規制の強化によるコスト上昇。
  • ②短中期/情報セキュリティ(当期に評価引き上げ): 事業活動の多くをITシステムに依存しており、事業中断や情報漏洩、対策費用の増加が生じ得る。会社は「2025年度に発生した情報セキュリティに関する事象や外部環境の変化等を踏まえ」影響度と起こりやすさを見直したと記載。
  • ②短中期/主要原材料の調達、地政学的リスク、多様で有能な人材の確保: 原材料の価格高騰や供給停止、20を超える国での輸出入制限や関税、人材の確保・定着の難しさ。
  • ③継続的に留意/大規模自然災害、人権尊重、法規制とソフトローのコンプライアンス。
  • その他リスク/品質、財務リスク(為替変動、金利変動、格付低下、保有資産の価格変動)、税務、訴訟。

(当期の「個別戦略リスクのヒートマップ」で評価が変更されたのは情報セキュリティの1項目です。被害額や復旧費用の実額は有報の抽出データからは確認できませんでした)

株主還元

ゆり: 株主還元だけを見ての投資はダメですが、長期で買う前提の場合は現在値を知っておきましょう。

項目数値補足
発行済株式総数1,521,010,086株2024年10月1日付で普通株式1株につき3株の株式分割を実施。分割前は507,003,362株で、実質的な株式数は5期を通じてほぼ不変
自己株式数58,143,134株自己保有割合3.82%。前期1.17%、3期前まで0.04%。株式報酬制度の信託財産として日本カストディ銀行が保有する株式は含まれない
1株当たり年間配当52円中間26円+期末26円。分割後基準で前期49円から3円増配。次期は年間57円(中間26円+期末31円)の予定
配当利回り3.14%参考株価1,657.5円ベース
連結配当性向64.0%52.00円 ÷ 基本的1株当たり利益81.29円。前期は分割後基準で38.7%相当
DOE2.7%会社開示値。目標は4%以上
配当方針累進配当2025年2月に「配当性向40%」から「DOE4%以上を目指した累進配当+機動的な自己株式取得」へ変更。累進配当は毎年増配または最低でも横ばいを続ける方針
自己株式取得699.99億円2025年8月7日の取締役会決議(上限45,000,000株・700億円、取得期間2025年10月1日〜12月23日)に対し40,379,200株を取得。株式数ベースの未行使割合は10.3%
株主還元総額1,496.6億円配当796.5億円+自己株式取得700.1億円で5期最大。当期フリーCFは△956.5億円で、差引△2,453.1億円
ストック型収益に対する配当該当なし酒類・飲料・食品の都度販売が中心のフロー型。参考として配当総額771.18億円 ÷ 売上収益28,946.8億円=2.66%、営業利益比では41.5%
大株主上位10名で41.33%日本マスタートラスト信託銀行(信託口)18.44%、日本カストディ銀行(信託口)7.50%、JPモルガン証券2.42%。所有者別では外国法人等42.25%、金融機関31.89%、個人その他14.78%

7. 補足: データの読み方と注意点

参考株価は本記事を作成した時点の値(1,657.5円、2026-08-03 終値)を使用しています。時価総額・PER・配当利回り・指標まとめのネットキャッシュ比率はこの参考株価を前提とした参考値で、時価総額の計算では自己株式を控除していません。

アサヒグループホールディングスはIFRS会計基準の適用会社です。本記事の財務数値は連結(IFRS)ベースで、日本基準とは項目の意味が異なります。「収益(売上収益)」が日本基準の売上高、「資本合計」が純資産、「非流動資産・非流動負債」が固定資産・固定負債にあたります。特にIFRSの営業利益は、固定資産売却損益や減損損失などを「その他の営業収益・費用」として営業利益の中に含むため、その年だけの損益が営業利益に直接あらわれます。会社が中長期経営方針で使う「事業利益」はこれらを除いた別の概念ですが、実額は抽出データに含まれていません。金額は原則として億円に丸めているため、合計欄と内訳の単純合算に丸め差が生じる場合があります。

5年推移表と前期比較表のネットキャッシュ比率は、各期の有価証券報告書提出日の終値と当時の発行済株式総数から算出した各期の時価総額に基づく参考値です。指標まとめの△59.01%は記事作成時点の参考株価基準のため、算出基準が異なり値がずれています。

ネットキャッシュは現金及び現金同等物から有利子負債(社債及び借入金の流動・非流動の合計)を差し引いた値です。有価証券は抽出した財務データに該当科目の行が5期とも無いため0円として扱っています。またリース負債はIFRSの区分上「その他の金融負債」に含まれ独立した科目が無いため、有利子負債に含めていません。リースを含めると実質的な負債水準はこれより大きくなります。

2024年10月1日付で普通株式1株につき3株の株式分割が行われています。1株当たり利益と1株当たり純資産は会社が過去へさかのぼって調整済みですが、1株当たり配当額は2024/12期のみ分割前後の混在(中間66円+期末27円=93円)で記載されています。本記事では分割後基準に統一した49円を使用しています。

報告セグメントの区分が2度変更されています。2021/12期は「酒類・飲料・食品・国際・その他」、2022〜2024/12期は「日本・欧州・オセアニア・東南アジア・その他」、当期は「日本・東アジア・欧州・アジアパシフィック・その他」です。このためセグメント別の5期比較はできません。加えて、セグメント別の売上収益とセグメント利益の実額は抽出データに含まれておらず、取得できたのは設備投資額と従業員数のみです。

有価証券報告書の抽出データに経営成績・キャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)本文が5期とも含まれないため、営業CFの急減要因や短期借入金を増やした理由などは、キャッシュ・フローや損益の明細から推し量った推定を含みます。会社が開示している説明と推定は本文中で区別して記載しています。具体的には、その他の営業収益の減少と前期の固定資産売却益の対応、営業債権の増加とシステム障害の因果、その他負債△758.7億円の内訳、短期借入金の純増+6,608.5億円の使途が推定にあたります。

当期に発生したサイバー攻撃に伴うシステム障害について、会社はEPS・ROE・ROICのガイドライン未達とEBITDAの減少という定性的な説明を行っていますが、被害額や復旧費用の実額は開示されていません。その他の営業費用の増加412.4億円のうち、減損損失208.2億円を除く約204億円の内訳も確認できませんでした。

当期の有価証券報告書は、例年の3月末提出から約4か月遅れて2026年7月27日に提出されています。提出遅延の理由そのものは抽出データに記載がありません。

財務諸表は EDINET のデータから自動取得しているため、正確性に欠ける可能性があります

本記事は EDINET 提出の有価証券報告書(第102期、2026年7月27日提出)をもとに作成した情報整理記事です。 特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。 投資判断はご自身の責任でお願いします。